<阪神3-6巨人>◇15日◇甲子園

 このままじゃ終われん!

 首位攻防初戦の悔しい黒星、阪神のリードオフマン西岡剛内野手(28)が「やり返す!」と逆襲の炎を燃やした。左膝付近に自打球を当て途中交代したDeNA戦から一夜明け、何ごともなかったように強行フル出場。反撃の犠飛、守備では美技でチームを鼓舞し続けた。2・5差と突き放され、球宴前の奪首は消滅も、宿敵との戦いはまだここからだ。

 最後まで勝負の流れを引き寄せられなかった。セ界のトップに立つ巨人との首位攻防戦。得点を刻んでも中盤以降は重量打線の1発攻勢に沈む。阿部のソロ、村田のソロ…。追う展開を変えられず、力尽きた。それでも、最後までファイティングポーズを解かない。

 全身で闘争心をあらわにしたのは手負いの西岡だ。3点ビハインドの9回1死一、二塁。遊ゴロになっても、左膝が万全ではないのに一塁に全力疾走。併殺打をまぬがれ、後続に望みを託した。それでも、情勢は変わらず、巨人と2・5ゲーム差に広がった。険しい表情で「(杉内は)いい投手だから。1点1点、取っていかないといけない。(点を)取って取られて、取って取られての展開。バッター陣が向こうに負けたということ」と振り返った。

 アクシデントとの戦いだった。前日14日のDeNA戦(甲子園)で左膝に自打球を当て、しばらく立ち上がれず…。プレーを続行したが、直後の守備から退いていた。5月から痛めていた左膝に追い打ちをかける負傷で、試合直後は腫れた状態。この日の大一番の出場も危ぶまれる、瀬戸際の状況だった。それでも、大切なV争いなのだ。西岡に「欠場」の選択肢はない。当たり前のように試合前は室内練習場でフリー打撃を行い、感触をチェック。直前のシートノックこそ回避したが、グラウンドでは捨て身の全力プレーだった。

 2回、藤井彰の左翼線適時二塁打で2点差に迫り、目前で能見が四球を選ぶ。1死満塁。次打者席で奮い立った。バットのグリップに吹きかけたスプレーを投げつけるように落とすと、いざ打席へ。杉内に追い込まれながらも低めに沈む変化球を執念でとらえる。中犠飛で走者の生還を見届けると手をたたき、叫んだ。

 西岡は「試合に出られるような状況になったのはトレーナーの方の応急処置が良かったから。球団のトレーナーに感謝したい」と言う。周囲の支えに感謝し、ワンプレーに魂を込めた。3回には長野の二遊間のゴロを間一髪、逆シングルでつかみ、華麗なジャンピングスロー。周囲に痛みを察知させない、機敏な動きで能見をもり立てた。5回には右翼線二塁打。自身も日本通算1000安打まで残り2本に迫った。勝つために攻守でハッスルした。

 巨人戦3連敗で、11年以来の前半戦2位ターンも確定。それでも、西岡は前を向く。

 「攻めていても試合に負けていますから。いいプレーをしても負けたら一緒。明日、やり返すしかない」

 球宴直前の巨人との直接対決は残り2戦。まだリベンジの機会は残されている。【酒井俊作】