虎の元気印が、ひたすらバットを振った。阪神は21日、甲子園で2時間半の練習を行った。7人のオールスター組以外で、挟殺プレーなどを確認。フリー打撃で全員が打ち終えた後は、新井良太内野手(29)だけがケージに入った。小山内打撃投手が投じたのは、球宴でDeNA三浦が見せた100キロに満たないスローボール。遅球を引き付けながら、大粒の汗を流していた。

 テークバックをしっかりとり、15分間、白球を捉えた。ライナーが何度も左翼スタンドに突き刺さった。守っていた野手やスタッフは、そのまま。外野をランニングしていた選手も、ジッと見詰めていた。静寂の甲子園に響くのは、力強くボールをたたく音だけ。遊撃の位置では、グラブを持った和田監督がスイングをしながら見守っていた。

 和田監督

 下を使わないと飛ばせないからね。今は上体だけで打っているから。良太も分かってはいるんだけどね。

 息つく暇なく「青空教室」も始まった。指揮官と新井良のもと、関川、高橋両打撃コーチも駆け寄った。和田監督がボールを迎えにいく姿勢も見せながら、身ぶり手ぶりで5分間。下半身の使い方と、窮屈になっていた内角球のさばき方を伝授した。

 新井良

 1人ではいつもやっていることなので。特にどうこうはないです。

 もがく大砲の復調はVへの鍵になる。開幕4番が、6月に不調で2軍落ち。7月も14日DeNA戦で今季2本目の満塁本塁打を放ったものの、21打数3安打で打率1割4分3厘と苦しむ。ここ2試合はスタメンを坂に譲った期待の星が、ノンフィクション作家・故山際淳司氏の名作よろしく「スローカーブを、もう1球」とばかりに、打開を目指した灼熱(しゃくねつ)の特打。流した汗は、決してウソつかないはずだ。【近間康隆】