<日本ハム3-2ロッテ>◇10日◇札幌ドーム

 日本ハムが今季2度目のサヨナラ勝ちを飾った。2点差を終盤に追いつくと、延長10回1死三塁から鶴岡慎也捕手(32)が左前へ「人生初」のサヨナラ打を放った。栗山監督は捕手の近藤を残して野手を使い切り、6回まで登板に備えてブルペン待機していた大谷も代走で起用した。総力戦を制し、反撃ムードに弾みを付けた。

 祝福の輪に加わる日本ハムの選手の顔は、どれも汗で光っていた。延長10回1死三塁。初球をたたいた鶴岡の打球は、左前で弾んだ。途中出場の選手会長が、一振りで試合を決めた。「サヨナラは人生初ですね。これまでそんな機会もなかったので…。どんどん振っていこうと思っていたけど、こんなにうまくいくとは思わなかった。ナミ(今浪)と飯山さんがお膳立てしてくれた」。好機をつくった2人も、プレーボールはベンチで迎えた。文字通り全員が一丸となって、白星をもぎ取った。

 栗山監督の信念でもある積極的なタクトが、終盤に試合を動かした。1点を追う8回1死二塁の好機には、いったん代打・稲葉を告げ、相手投手が左腕の松永に代わると、すかさず二岡をコール。2000安打を打つ大ベテランが“無駄遣い”になることも恐れず、得点へ執念を見せた。さらに9回、登板の可能性があり、6回までブルペンで待機していた大谷を代走で起用。延長に入った時点で、捕手の近藤を除くすべての野手を使い切っていた。

 選手への絶大な信頼も、栗山采配の根幹。ヒーローになった鶴岡には、耳打ちしていた。「サインは何もないから、思い切っていってくれ」。スタメンからは外していても、信頼は変わらない。鶴岡は「あれで吹っ切れたじゃないけど、考えがまとまった」。迷いなく、初球から振り抜けた。

 首位楽天からは10ゲーム以上離され、最下位に低迷。それでもこの日のスタンドには、本拠地開幕戦よりも多い3万4965人が詰めかけていた。栗山監督は「感じるものがあった。選手たちも感じたと思う。そういうのが大事」と目を潤ませた。総力戦をサヨナラで制した。エース武田勝の好投も報われ、ベンチスタートだった選手たちが主役になった。指揮官は「野球の神様っているんだなと思った。こういう試合をやって、勝たないと。みんなあきらめてないし、勢いがつくと思う」。試練ばかりを与える神様が、ようやくほほ笑んでくれた。【本間翼】