<広島4-5ヤクルト>◇25日◇マツダスタジアム

 今季限りでの現役引退が明らかになったヤクルト宮本慎也内野手(42)が、逆転勝利への流れをつくった。1点を追う8回1死一、二塁で代打で登場。二失を誘って好機を広げて逆転劇に導いた。今日26日には都内の球団事務所で引退会見を開く。クライマックスシリーズ(CS)進出に強い思いを持ち、最後まで戦い続ける。

 代打宮本が告げられると、敵地マツダスタジアムが沸いた。だが宮本には聞こえなかった。「集中していました」。2-3の8回1死一、二塁。「後ろにつないでいこう」と打席に入ったものの、20歳下の広島今村に2球で追い込まれた。

 ここからが見せどころだった。138キロフォークをファウルでしのぐと、4球目の148キロを一、二塁間に転がした。併殺を焦った二塁手の菊池がファンブル。全力疾走で1死満塁と好機を広げ、その後の逆転劇を生んだ。「安打なら良かったけどね。褒められた打撃じゃないです」と謙遜したが、小川監督は「ああいうしぶとさが大事。記録は失策だけど、つなぎの打撃はヤクルトに欠かせない」と絶賛した。

 引退を表明した日も、宮本は宮本だった。「報道の通りです」と引退を認めたものの「球団にそういう場所(会見)をつくっていただけるということなので、そこで全部お話ししたいと思います」と話して進退の話題は終了。「まだ完全に3位がなくなったわけではないので、そこを目指してみんなで力を合わせてやっていきたい」と、最下位に苦しむチームの戦いに思いをはせた。

 そんな姿勢が仲間の心を動かした。試合前の円陣。相川が「CSまで行って、宮本さんと長く野球をやろう」と語りかけると、全員がうなずいた。その思いはプレーに表れた。同点打の比屋根が「慎也さんが回してくれたのもあったのでつなごうと思って入った」と言えば、決勝犠飛の上田も「宮本さんが食らいついてつないでくれたので無駄にしたくなかった。すごくお世話になっているので何とか勝ちたいと思っていた」。宮本が体現してきた「つなぎ」は受け継がれていた。

 負ければ自力でのCS進出が消滅する試合を逆転で制した。3位広島とは6ゲーム差あるが、宮本は言った。「数字的には厳しいかもしれないけど、みんなで頑張りたい。勝つためにプレーします」。大逆転でのCS進出が最高の花道への第1歩となる。【浜本卓也】