<ヤクルト9-0阪神>◇15日◇神宮

 ヤクルトのウラディミール・バレンティン外野手(29)が、シーズン56本塁打のプロ野球新記録を樹立した。

 大記録達成は、球団の“バレンティン教育”のたまものでもあった。入団当初は本塁打しか頭になく、スカウトした奥村編成部国際担当次長も「1年目から本塁打の魅力や欲が出てきたのは少し懸念材料として見ていました」と苦笑い。守備と走塁への興味も薄く、全力疾走を怠ることも多かったという。

 そこで「怠慢プレーやチーム方針に従わない場合は2軍行きもある」という認識を持たせた。ベンチでは宮本や相川が、全力疾走や守備の大切さを説いた。昨季は状況別の打球方向などをデータで示し、自己中心的な打撃になっていると数値で証明した上で、登録を抹消したこともあった。

 今年7月、左アキレスけんを痛めた。打席に足を引きずって入ることもあった。大記録が懸かっていることもあったが、出来る限り走った。小川監督は「何でもオッケーってわけではない。そういう前例はつくれない。今も足の問題はあるが、『今日は走らないでいいよ』ということはない」と特別扱いはしなかった。

 今年、オリジナルTシャツをバレンティンが初めて自費で作り、関係者に配った。胸には「BACK

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 BACK(2年連続本塁打王の意)」の文字。プレゼントの理由を聞けば「みんなのおかげだからね」と感謝の思いを挙げた。社交的で、聞く耳を持つ性格なことも幸いした。教育方針は間違っていなかった。【浜本卓也】