マー君が胴上げ投手になる。星野楽天が西武に2試合連続サヨナラ負けを喫したが、ロッテが日本ハムに負けたため優勝マジックは2。勝っている展開では、開幕から無傷の22連勝の絶対的エース田中将大投手(24)が「守護神」となるプランが浮上。今日26日、球団創設9年目でのリーグ初制覇となる「楽天記念日」にふさわしい、粋なストーリーが用意された。

 ゴールテープを切るのは、マー君だ。「鬼門」西武ドームで2試合連続のサヨナラ負けを喫したが、今日26日にも球団初のリーグ優勝が決まる。好機をつぶしたあげくの敗戦とあって、星野監督は「どうでもいい。こんな野球をやっとるようじゃいかん。(優勝は)つかみとらな!

 他力本願じゃいかん」と、緊張感を漂わせながら球場を後にした。

 後味の悪い試合が続いたが、「王手」をかけたことに変わりはない。指揮官が温存していた夢プランが、実現しようとしている。ここまで25試合全て先発だったエース田中を、1日限定でストッパーに起用する。「連投にならない限り、9回に投げさせるよ。田中が胴上げ投手だ」と、約1週間前に明言。本来なら29日に先発予定だが、優勝決定の瞬間は、最もふさわしい男をマウンドに送り出す。1年間、チームを支えてくれた右腕への親心。田中は21日の日本ハム戦で無傷の22勝目を挙げた。今日26日に登板なら、中4日。間隔は問題ない。

 「胴上げ投手・田中」は、首脳陣の一致したプランでもある。ブルペンで救援陣を送り出す立場の森山投手コーチも賛同。田中の抑え起用に「誰も文句は言わないでしょう」と喜んだ。最高のシナリオで、歓喜の瞬間を迎えることになる。

 当の田中は試合前、今日先発する美馬に“けん制”を入れていた。練習を終え、報道陣に囲まれる美馬に「最後まで投げてくださいよ」と、意味深に笑いながら声をかけた。完投なら自分の出番はない。ブルペン待機を暗に意味するようなひと言だった。その後、体のケアで球場に残り、ベンチ裏で試合を見届けた。サヨナラ負けに笑顔はなく、表情も変わらず。抑えプランのことを聞かれても「それについて、僕は何も言えません」とだけ話した。1日も早く、優勝を決めるために集中力を高めているかのようだった。

 ブルペン待機は、札幌ドームで日本ハムと対戦している2位ロッテの試合状況にもよる。今日26日の優勝の条件は、楽天が勝ち、ロッテが負けた場合のみ。仮に、ロッテが大量リードをしていれば、ブルペンに向かう必要はなくなる。ブルペン待機のタイミングについて、敗戦後の星野監督は「どうでもいいよ」。いずれにせよ、悲願の優勝はもう目の前だ。エースで締めて、至福の時を迎える。【斎藤庸裕】

 ◆過去の胴上げ起用

 優勝決定のマウンドにエース級を起用した最近の主なケースでは、89年近鉄の阿波野がいる。この年19勝で最多勝に輝いた阿波野は、優勝を決めた10月14日ダイエー戦で7回途中から登板。シーズン初の救援で胴上げ投手になった。このほか85年西武の東尾は15勝を挙げ、優勝を決めた10月9日近鉄戦の最後を締めて胴上げされた。66年巨人は9月23日阪神とのダブルヘッダー第1試合で最後に金田を起用。川上監督が、国鉄時代に優勝経験のない金田に優勝のマウンドを任せる粋な起用だった。