西武渡辺久信監督(48)が今季限りで辞任することが14日、分かった。近日中にも発表される。チームはロッテに1-4で敗れ、クライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ進出を逃した。今季はシーズン2位に食い込み、監督生活6年で5度のAクラス入り。安定した成績を残してきたが、就任1年目の08年優勝以来、5年連続V逸の責任をとり、辞意を固めたとみられる。後任は02年から2年間、西武で指揮を執った伊原春樹氏(64)の就任が確実だ。

 渡辺監督がV逸の責任を自らの進退でとる。レギュラーシーズン2位からの日本一を目指したが、CSファーストステージで3位ロッテに敗退。来季の去就が注目されていた渡辺監督は試合後「終わったばかりだから、これから考える」と話すにとどめた。だが関係者の話を総合すると、今季限りでの辞意を固めており、球団にも伝えた模様だ。

 今年は1年契約だった。監督6年目で5度のAクラス入りを果たし、来季続投が基本線とみられていた。一方で、就任1年目に優勝した08年以来、球団初の5年連続V逸。親しい関係者には「優勝を逃した時点で、ケジメをつける」と打ち明けていた。9月26日に西武ドームで楽天に敗れ、優勝を決められて目の前で胴上げを許した。集大成をかけた1年で結果を出せず、責任感の強い指揮官が決断したとみられる。

 球団は去就を明言しなかった。鈴木球団本部長は「リーグ制覇が目的だったので、現場としても不本意な成績。ただ戦力のコマ不足や、けが人がいる状況で、監督としてはよくチームをまとめてくれた」と評価した。9月の時点で3位に最大5ゲーム差離されて4位だったが、中村、片岡ら故障者が戻ったシーズン終盤は快進撃。8連勝フィニッシュでCSへと導いたが、渡辺監督の優勝へのこだわりが強かった。

 球団側は有事に備え、後任人事に着手。潮崎哲也2軍監督(44)の昇格が既定路線だったが、経験が浅く、1軍監督は時期尚早と判断。経験豊富な伊原春樹氏に一本化した。西武では02年から2年間監督を務め、リーグ優勝、2位の好成績を収めた。確固たる指導論、卓越した野球論は球界でも屈指で、西武、阪神、巨人でコーチを歴任。オリックスでも監督を務めるなど、指導力には実績がある。解説者として球場をひんぱんに訪れ、2軍にも足を運んでチームの現状と課題を明確に把握しており、伊原氏に白羽の矢が立った。

 渡辺監督が残した功績は大きい。07年5位に沈んだチーム立て直しへ若返りを図り、中村、栗山らを一本立ちさせた。今年も苦しい戦いの中で手腕を発揮。4年目左腕の菊池が9勝と才能を開花し、4番に抜てきした浅村は打点王を獲得した。采配面だけでなく、ファンに愛される人間性、観客動員や営業面での貢献度も高く、球団内で長期政権を望む声は多かった。黄金期のDNAを伝え、新生西武の土台をつくった立役者が、ユニホームを脱ぐ。