西武伊原春樹新監督(64)が23日、秋季練習初日から伊原イズムを注入した。練習の冒頭、選手、コーチ、スタッフを前に約10分間の訓示。西武の歴史と伝統を強調した上で、西武鉄道の初乗り運賃を尋ね、「?マーク」の選手たちに伊原節全開で指導。茶髪、ひげの禁止、ユニホームのズボンの裾を上げることをルール化するなど、人間性を重視する伊原流を義務づけた。

 確認しておきたかったのは、野球の戦術や技術ではなかった。練習の冒頭、ナインの前に立った伊原監督の言葉は、誰もが予期せぬものだった。「みなさんは西武鉄道の初乗り運賃を知っていますか?」。監督を中心に輪になった選手たちが目を点にさせる中、言葉を続ける。「知らないのは恥ずかしいこと。140円なんですよ。我々は西武ホールディングスの中の西武ライオンズなんですから、そういうことも知っておかないと」と力説した。

 約10分間の訓示は、伊原節全開だった。話のテーマは野球人としての身なりにも及んだ。「お客さんは一生懸命働いたお金でチケットを買って、球場に来てくださる。茶髪やひげ面を見に来るんじゃないんです。中村の豪快なホームラン、雄星の剛速球…。そういうプレーが見たいんです」と訴えた。スパイクにかかるユニホームのズボンの裾にも「100分の1、2秒を争う中で、それで遅れたというのではね。スパイクはしっかり見せるように」と改善を求めた。

 意識改革に向け、来春キャンプ前に訓示を発表させる意向も示した。「(1月)31日に集まった時に、言ったことを名指しで言ってもらうよ」とメモに書き留め、記憶することを指示した。03年以来の監督復帰の秋季練習初日を終え、伊原監督は「おやじが子供に対して、こうなんだよ、というような。10年前と何ら変わらないですよ」と穏やかに話したが、伊原イズムを随所にちりばめたスタートだった。【久保賢吾】