ソフトバンクが19日、日本ハムからFA宣言した鶴岡慎也捕手(32)と札幌市内のホテルで獲得交渉を行った。4年で総額4億円以上の条件を提示し、想定される単身生活も「単身赴任手当」による支援を約束した。他球団との交渉予定はなく「一本釣り」が確実。日本ハム選手会の会長も務める鶴岡は混乱回避のため、25日に控える同納会までに態度を表明するとみられる。

 鶴岡は身震いした。1時間を超す交渉で印象に残る言葉を聞かれた時だ。「優勝しかない。優勝以外は負けだと、僕もそういう気持ちでしたので」。言いながら背広の背中が伸びた。これが、孫オーナー率いるソフトバンクのシンプルかつ、揺るぎない方針。4年総額4億円以上の好条件で常勝軍団からラブコールを受け、「長年ライバル球団の捕手として見てくださり、高く評価していただきうれしかった」と感謝した。

 中学時代に当時のヤフードームで試合観戦した。「鮮明に覚えている。そういうチームからのオファーがありうれしい」。鹿児島出身。地元九州との縁を感じる一方、最大の不安材料が家族問題だった。来年1月に第3子となる長女が誕生予定で、仮に入団となれば1年目は単身赴任を覚悟。「妻は札幌出身なんで引っ越すのは不安だろうし、心配。僕の決断に任すと言ってくれていますが…」。そんな鶴岡を「単身赴任手当」でフルサポート。単身者にぴったりな食事付き物件やホテルなど住環境づくりはもちろん、シーズン中の帰省にも現場の理解を取り付けた上で支援することを約束した。

 好条件の中で唯一、正捕手の約束手形だけはなし。交渉役の小川編成・育成部長は「捕手としての能力、打力も上がっており、総合力で正捕手を目指してほしい」と話し、11年に西武からFA移籍した細川との真っ向勝負を要求した。鶴岡は「どこでもチーム内競争は絶対ある。日本ハムでも競争に勝って試合に出てきた」とリーグ優勝、日本一も経験した女房役のプライドをみせた。

 すでに日本ハム残留という退路を断った。現時点で他球団と交渉する予定はなく、一本釣りによる「ソフトバンク鶴岡」の誕生は近い。ただこの日は「日にちは決まっていない。考えが出たら表明します」と慎重で、態度を保留。会長を務める日本ハム選手会の役員改選及び納会が25日に控えており、結論が長引くと影響が出てくる。義理堅く、筋道を通す性格だけに、ここをXデーに意思を固め、仲間たちへ感謝と挑戦の思いを伝える模様だ。北海道から九州へ-。「Uターン移籍」が間もなく決まる。【押谷謙爾】