ハートをわしづかみにされた!

 広島からFA宣言した大竹寛投手(30)が20日、広島市内のホテルで巨人と初交渉した。席上、携帯電話を通して原辰徳監督(55)から「日本一連覇を達成できるチームを作るために、力を貸してほしい」と直接ラブコールを送られた。3年契約の年俸5億円(金額は推定)と条件提示も受けた。ソフトバンク、楽天に続き3球団目の交渉を終え、在京球団志望の右腕の巨人入団は決定的。近日中にも正式発表する運びとなる。

 大竹の心に染みた。「日本一連覇を達成できるチームを作るために、力を貸してほしい」。1時間半の交渉が半ばに差しかかったころ。交渉場所の1泊8万円のスイートルームが静寂に包まれた。原沢球団代表兼GMの携帯電話に耳を傾けると、原監督からの熱い言葉が聞こえてきた。「いろいろ評価していただいた中で原監督からの言葉は印象に残った」と笑みがこぼれた。

 名もなき試合を覚えていてくれた。06年3月8日のオープン戦、広島-巨人戦。倉敷マスカットスタジアムでの一戦は底冷えする中で行われた。巨人の選手がベンチでガタガタと震える中で、当時22歳だった大竹は最速150キロを計測。4回1安打無失点と、ねじ伏せた。

 大竹

 原監督は覚えていて、寒い中で一生懸命に投げる姿に好印象を持っていただいたそうです。言われてすぐに思い出したけど、まさか、その試合をそういう見方で見てもらっていたとは思わなかった。その時は無我夢中だったので。素直にうれしかった。

 球宴出場時にあいさつを交わすぐらいしか接点がなかった指揮官の存在が大きくなった瞬間だった。

 ソフトバンクから出来高を含めて4年最大8億円、楽天から3年6億円前後と破格の条件提示を受けている。その中で巨人は3年5億円と条件面では下回る。だが原監督の熱意は十分に伝わった。背番号はこの日は提示されなかったが、愛着ある17番も用意されている。埼玉県出身で在京球団への志望が強いと言われる男は言葉を選びながらも地域性について「考える要素の1つになる」と認めた。

 全球団との交渉が終了。他球団への連絡などもあるため即日表明とはならなかったが、近日中に正式決定する流れだ。「ジャイアンツさんの気持ちは自分の中では伝わった」。巨人に、原監督の胸に飛び込む日は近い。【広重竜太郎】