大ベテランが、覚悟を決めた。日本ハム稲葉篤紀内野手(41)が5日、札幌市内の球団事務所で契約更改交渉に臨み、野球協約で定められた減額制限の40%に迫る7000万円減の1億3000万円+出来高払い(推定)でサインした。記者会見では「来年も同じような成績なら、引退も考えている」と初めて公言。コーチ兼任の今季から選手専念に戻る20年目の節目は、進退を懸けて挑む。日本ハムはこの日で、全選手との来季契約を完了した。

 大幅減俸にも、41歳は謙虚だった。来季契約の更改を終えた稲葉は、開口一番「(球団に)来年も野球をやらせてもらえることに感謝したい」と胸の内を明かした。無理もない。91試合に出場し打率2割3厘は、19年のプロ生活でワースト。「もっともっと、下げられるのかなと思ったけれど…」。減額制限を超えるダウン提示を予想していたそうだが、ふたを開けてみれば辛うじて35%減。期待を寄せてくれる球団の思いに励まされる一方で、プロとしての覚悟も決まった。

 稲葉

 来年も同じ成績なら、当然、引退も考えている。それぐらいの覚悟がないとダメ。20年目という節目の年なので、いいかなと。ダメなら気持ち良く引退できる。野球人生を懸けた、悔いのない1年にしたい。

 よどみなく決意を口にする表情に、一切の迷いはなかった。

 開幕前、最年長侍として第3回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に出場し、2次ラウンドのオランダ戦では本塁打も放ったが、シーズンに入ってからは経験したことがないほどの大スランプに陥った。6月下旬まで打率は1割台と低迷し、復調のきっかけがつかめない。弱気になりかけた時、兄のように慕うヤクルト宮本が引退を表明。「1年でも長くお前はやれと言われているからね」。このままで、終わるわけにはいかない。

 今季はコーチ兼任として積極的に若手を指導してきたが、来季からは再び一選手に戻る。プレーヤーに専念して欲しいという、球団側の配慮だった。「便利屋と言ってはおかしいけど、外野でも内野でも、何でも出来るようにしておく。隙があれば、当然、レギュラーを狙っていく」。プライドをかなぐり捨てて、新たな気持ちで挑む20年目。今オフは早めに土台となる肉体を仕上げるつもりだ。「選手として、もう一花咲かせたい。もう1度、優勝を取りに行くという姿勢で挑みたいと思う」。再起を懸けて、覚悟のスタートを切る。【中島宙恵】