元巨人、ヤンキースの松井秀喜氏(39)が地元ファンの前で将来、期待される巨人監督就任についての現在の心境を語った。7日、石川・能美市で市民栄誉賞の表彰式に出席。その後のトークイベントでファンから「巨人監督になる野望は?」と聞かれ「次の目標ははっきりしていない。なるかどうかは誰にも分からない」などと慎重に答えた。それでも引退後の活動には「楽しみにしてください」とファンに夢を抱かせた。

 松井氏の懐をえぐるような単刀直入な質問だった。地元男性ファンに「核心を突く質問です。長嶋巨人、原巨人、そして松井巨人。将来、監督になる野望はありますか?」と聞かれ「困りましたね~」と困惑の表情を浮かべた。ただ現役時代は恒例だった地元でのトークショー。結婚前は「いつ結婚しますか?」と直球のような質問が飛び交っていた。故郷の期待に応えるように、口を開いた。

 松井氏

 僕の意思どうこうではなく、両者の気持ちが一致して初めて成立すること。現時点では分からない。今、原監督で毎年あれだけ勝っている。個人的には原監督がまだまだ巨人を強くしてほしい。現時点では、あまり思っていない。

 引退から1年がたった。来月は古巣巨人の宮崎キャンプで臨時コーチ、ヤンキースでもキャンプで指導予定と、指導者へのレールを歩み始めている。だが松井氏の中では、歩む先の方向性が固まっていない。「今は休憩中で、どこへエネルギーを向けていくか分からない。みなさん指導者を期待されていると思うけど、自分がそこに情熱を100%向けないと、いいことはできない。目標が見つかったら、しっかり次へ進んで行きたい」と生半可な思いでは挑めないことを強調した。

 巨人の監督の椅子は、伝統があり、格式が高いことを知っている。「巨人の監督は巨人で選手をまっとうされた方しかしてませんから」。生涯巨人の生え抜きだけが、指揮してきたという歴史を受け止めている。当時、一部ファンの巨人残留の思いを振り切り、ヤンキース移籍という自分の夢を貫いた事実は今でも忘れていない。

 だがメジャーで成功し、国民栄誉賞を受賞した男が歴史を変えても、誰も異論はない。引退後の活動については「楽しみにしてください」と希望を抱かせた。遠くない将来に、監督として故郷に帰る日も来るだろう。【広重竜太郎】