【グアム(米国)18日=池本泰尚】50セーブボディー&頭脳の完成だ。阪神の新守護神、呉昇桓(オ・スンファン)投手(31=韓国サムスン)がグアムで自主トレを公開。約1カ月滞在している南国で体をいじめ抜いている。ムキムキのボディーに加え、12年までヤクルトで活躍したカブス林昌勇から日本野球のデータを入手。先輩と交わした男の約束を胸に、50セーブを目指す。

 照りつける日差しより熱かった。最高気温29度を観測した南国グアムで呉昇桓はストイックに体をいじめていた。真っ黒に日焼けした顔は、入団会見を行った約1カ月前より明らかに引き締まっていた。サングラスの日焼け跡を目の回りに残し、ひときわ目立つ白い歯を見せて笑った。

 呉昇桓

 体重は計ってないので分からないけど、久しぶりにサムスンの選手、監督、コーチに会って、いろんな人から「だいぶやせたね」と言われる。思った通りに体がつくれている。

 マウンドでは表情を崩さないため「石仏」のニックネームを持つ右腕が、柔和な表情を浮かべるのだから、順調な調整ぶりがうかがえる。もちろん“やせた”わけではなく、この1カ月で体を絞り上げた。昨年12月18日からグアムに滞在し、例年より長い1日約7時間、昼食を挟んで体作りに費やしている。すでに「徐々になら入れる」といつでもピッチングできる状態だが、グアムでブルペン入りはしない予定。それだけ、入念にビルドアップしている裏返しだ。

 隆起した大胸筋に、背中もひと回り大きくなったように見える。下半身に目を移せば、張りのある太ももに、盛り上がったふくらはぎ。そのボディーを見れば日本新記録への期待もふくらむ。韓国サムスンで2度マークしたシーズン47セーブは韓国プロ野球記録。日本では中日岩瀬、阪神藤川(現カブス)の46セーブが最多。記録達成時の韓国はシーズン128試合。144試合制の日本へ移れば…。呉昇桓は中村GMに47セーブに照準を定めることを伝えているが、日本球界初の大台50Sも見えてくる。

 体だけではなく、重要な情報もゲットした。グアムで一緒に練習する林昌勇は、ヤクルトに5年間在籍し、通算128セーブ。韓国サムスン時代の先輩に「いろんな話を聞いている」という。「具体的には話せないけど」としたが、巨人戦で長野、村田、阿部ら主力級にめっぽう強かった先輩から貴重な助言を受けているようだ。鬼に金棒ならぬ、ムキムキボディーにマル秘データだ。

 男の約束も交わした。韓国サムスン時代、林昌勇から引き継ぐ形でストッパーを任され、林昌勇が持っていたセーブ記録を次々に塗り替えた。今回も「自分が(日本で)持っている記録を破るまで帰ってくるな」とゲキを飛ばされ「確実に全部塗り替えていきます」と言い切った。強靱(きょうじん)な体と先輩の経験に基づくデータを武器に、呉昇桓が新しいステージに立つ。