ティッシュ王子がシンデレラや~。阪神ドラフト5位山本翔也投手(25=王子)が1軍首脳陣がいる沖縄・宜野座キャンプスタートを確実にした。22日、鳴尾浜ブルペンで44球の投球練習。左腕からの安定したコントロールで初視察だった和田監督をうならせた。春季キャンプの振り分けは今日23日に決まるが、左キラーの資質をアピールした山本が「ドラ5投手」としては初の沖縄スタートに大前進した。

 下克上左腕が魅了した。山本がブルペンで虎首脳をくぎづけにした。寒風吹きつける鳴尾浜。同じ新人サウスポーの6位岩崎と並んで投げた。途中から捕手の真後ろに和田監督と黒田ヘッドコーチがいた。捕手を立たせて4球、座らせてからはカーブを交え40球を投じた。沖縄行きチケットを引き寄せるには十分のデモンストレーションだった。

 和田監督

 フォーム的に勢いあるし、特に左打者にいやらしい感じだね。コントロールもいいな。順調というか、膝も影響なしでね。

 初めてチェックした虎将も「ほの字」だった。入寮で所属会社製品の高級ティッシュを大量に持ち込んだ「ティッシュ王子」は、サイド気味にちぎっては投げた。安定したリズムとともに、受けた育成原口も「低めに集まってボールに指がかかっていた」と驚いた制球力。低めに構えたミットはほとんど動かなかった。黒田ヘッドも「ええボール放ってたな」とうなずいた。

 春季キャンプの振り分けは、今日23日の合同コーチ会議で決定する。今年は従来の「1軍」「2軍」の概念を捨てるが、1軍首脳がもっと見たくなる高評価だ。1、2軍分離となった03年以降、ドラフト5位以下で沖縄でキャンプインした投手はいない。ドラフト下位、しかも右膝違和感で出遅れながら、ジワジワと挽回した。病にダウンした同期をよそに、日増しに株を上げた。

 社会人で花開いた遅咲きの25歳は「和田監督が見られていて緊張もあったけど、アピールしないと」と必死だった。

 山本

 高橋由伸さんに憧れて野球をしましたので、勝負したい。三振を取りたいです。インか外の真っすぐで見逃し三振を。インコースを投げるのは苦ではない。こういうチャンスは毎年来るわけではないので、ポジションを確立したいですね。

 左キラーへの自覚は十分にある。ターゲットは、昨季も阪神戦で27打数14安打3本塁打だった巨人高橋由に定めた。筒井の先発転向で、頼れる中継ぎ左腕は加藤1人の状態。1人でも多くほしい補強ポイントに滑り込む覚悟を見せた。史上最大の大抜てき。山本が隠し玉から一気に主役へ駆け上る。

 ◆宜野座スタートした新人

 分離キャンプが始まった03年は11人の新人のうち、前年ドラフト4巡目指名の中村泰広が参加した。昨季の1位藤浪、4位小豆畑まで15人の新人が沖縄・宜野座でキャンプイン。野手では04年ドラフト6巡目赤松、09年5位(藤川)俊介、昨季の小豆畑ら下位指名がいるが、投手では中村のほか05年大学・社会人4巡目渡辺、11年4位伊藤和が最下位。01年~04年は自由枠、希望枠制度があり05年~07年は高校生と大学・社会人の2段階ドラフト。中村、渡辺は実質、3番目の指名だった。<山本翔也(やまもと・しょうや)アラカルト>

 ◆生まれ

 1988年(昭63)10月12日、福井・武生市(現越前市)。

 ◆球歴

 父龍朗さん(57)の影響で武生南小3年から「武生ブルーウェーブ」で投手として野球を始める。武生第二中では「武生ボーイズ」で投手。福井(現福井工大福井)では1年夏に甲子園に出場したが、登板機会なし。法大ではリーグ戦で通算3試合登板。

 ◆実績

 王子製紙(現王子)に進みエースに急成長。3度都市対抗に出場した。

 ◆遠山の再来

 21日のブルペン投球を見た山口コーチは「遠山に似ている」。ちなみに伝説の「遠山-葛西-遠山」リレーは山本が12歳のシーズン、福井球場で始まった。

 ◆座右の銘

 人間万事塞翁(さいおう)が馬。

 ◆好きな芸能人

 能年玲奈。「『あまちゃん』はダイジェストで全部見た」。

 ◆趣味

 掃除。「部屋は常にきれいです」。

 ◆サイズ

 182センチ、90キロ。左投げ左打ち。