中日谷繁元信兼任監督(43)が愛のムチを振るって発進した。沖縄・北谷キャンプで1日、選手としてハードメニューをこなしながら新監督としても始動。キャッチボールの相手にドラフト3位桂依央利捕手(22=大商大)を指名し、ブルペンでは捕球のお手本を示した。監督としての初仕事は、重要課題の後継者育成。朝から晩まで、落合監督時代を思い出させる地獄の猛練習も復活させた。

 練習開始40分で谷繁新監督の怒声が響いた。「おい、緊張してんのか!

 真っすぐ行ってねえぞ!」。初カミナリの対象はルーキー。キャッチボールの制球が定まらず、距離の広げ方も蛇行していたドラフト3位桂だった。近くにいたタレント峰竜太が「監督、緊張するなって言っても無理ですよ」と声を上げたのも当然のミスマッチなキャッチボールだった。

 谷繁監督

 (桂は映像でしか)見たことがなかったんでね。下がり方がフラフラしてたでしょ。まあ緊張するなと言ったけど緊張するのもしょうがないかな。

 ポスト谷繁の育成。長年先送りされてきた重点課題に、兼任監督船出の日から着手した。実はドラフトで獲得を推薦したのも、映像でホレ込んだ監督自身。二塁送球1秒8の強肩を持つ185センチの大型捕手に、可能性を感じての指名だった。「キャッチボールするぞ!」とウオーミングアップ中に声を掛けた。

 英才教育はブルペンでも続いた。2位又吉の投球を受けていた桂に代わって、捕球のお手本を示した。「達川さん(コーチ)に見せてやってほしいと言われたんでね」。直立不動の桂を横に20球、構えたミットが微動だにしない熟練キャッチングを披露。今季、野村克也の持つ3017試合出場更新を目指す名捕手の奥義を見せつけた。

 谷繁監督

 でもプロなら自分の形を出さないとダメ。僕のマネをするより、自分の技を磨いた方がいい。

 アドバイスを送ると、選手谷繁として小笠原、和田、荒木と同組でのフリー打撃でライナー性を連発した。走塁練習中には監督谷繁に戻り、ゴメスとエルナンデスの打撃をチェック。再度、選手谷繁として内野ノックを受け、5キロ走を完走した。「監督目線、捕手目線の両方がありました。みんなこれから」と始動日から、めまぐるしく立場を変えた。【松井清員】