阪神福留孝介外野手(36)の逆襲が始まった。キャンプ初日の1日、ランチ特打に飛び入りすると、サク越えを連発した。主力選手が球場を後にしてからも黙々と打ち続け、スイング数はいきなり断トツの500超えとなった。昨季手術した左膝への不安も一掃し、和田監督も絶賛だった。屈辱の成績に終わった昨季から、今季にかける思いをバットで表現した。
思いの丈はバットに込めた。キャンプ初日、メーングラウンドの主役となったのは福留だった。ランチタイム、練習メニューにはマートンの名前しかなかったが、真っ先に打席に立ったのは福留だった。
「紙に書いてなかっただけでしょ」
ひそかに決めていたプラン。飛び入りのランチ特打は圧倒的だった。普段ならば、打撃練習の最初はセンターから左方向への打球を打つ福留がガンガン引っ張った。初めての屋外フリーとは思えないほど打球はポンポンと外野フェンスを越えた。球団が雇ったボール拾いのスタッフも外野フェンス際で見上げるばかり。61スイング中、16本を放り込んだ。ミートに徹した“初日らしい打撃”のマートンとは対照的だった。
さらに全体練習終了後は若手の特打を横目にロングティーを敢行。「オリャッ!」と雄たけびを上げながら、何球もスタンドまで運んだ。すでに主力選手の多くが球場を後にし、日も暮れかけてきた午後4時…。ようやく終わりかと思いきや、今度はバットをかついで室内練習場へ。若手捕手が捕球練習に使う予定だったカーブマシンをぶんどった。
「山田コーチ、ここいいですか?」
「おう…。まずはストレートで練習するわ」
「そうして下さい!」
移籍2年目、もう余計な遠慮もない。ひたすら自分の世界に没頭し、バットを振り続けた。総スイング数は500を超え、断トツの練習量。昨季手術した左膝、年齢による衰え、若手の台頭、周囲の不安説を一蹴するような、鬼気迫るキャンプ初日だった。
「どうでしょうかね。振り込み?
そういうつもりでキャンプに来ているから。いろいろと確認したいこともあるし」
練習後、クールを装ったが、福留は決して屈辱を忘れない男だ。プロ入りしてから数年は遊撃で失策が続き、外野に転向した当初もミスばかりだった。福留は当時、自分がミスした試合の新聞記事を切り抜いて保管していた。それが明日への原動力だった。打率1割9分8厘、6本塁打、31打点。故障ばかりだった昨季がいかに悔しかったか。福留の腹の内を、この日の500スイングが物語っていた。【鈴木忠平】



