大先輩、ありがとうございます!

 中日浜田達郎投手(19)が7日、愛工大名電のOB工藤公康氏(50=日刊スポーツ評論家)から「個別レッスン」を受けた。224勝を積み上げたレジェンドの言葉は、2年目の若き左腕にとって目からうろこの教えばかり。高校時代に「工藤2世」と言われた後輩が、先輩からの金言を胸に刻み飛躍する。

 大先輩の言葉には成功のヒントがちりばめられていた。浜田が50球を投げ終えてブルペンを出ると、大先輩がおいで、おいでと手招きしていた。小声でヒソヒソと話すこと1分。その後、工藤氏が投球動作を見せて2人でリリースの位置を確認。31学年も下の後輩は直立不動でコクリ、コクリとうなずいた。

 気になる“個人授業”の中身とは?

 浜田は言葉を濁しながらも「テークバックの使い方とリリースを前から投げるということです」と明かした。工藤氏も「前で投げるのがちょっと苦しそうだったからね」とニヤリ。スムーズなフォームからリリースポイントを前にして球持ちを良くする。そのためのコツを伝授されたようだ。

 浜田にとっても工藤氏は特別な存在だった。高校時代は「工藤2世」とも言われ、3年夏には高校野球の番組で初対面。ずっと意識してきた。同氏が書いた野球教本も熱心に読み込み「ストライクを投げるコツは本塁付近から捕手に投げ初めて、だんだんと投手板に近づいていくって書いてありました」と実践したこともある。貴重な時間を過ごした浜田は「なかなかない機会なのでうれしかった」と声を弾ませた。

 名球会左腕のアドバイスは技術面だけではなかった。10代の後輩を昔の自分に重ね、優しい言葉を残した。

 工藤氏

 もし2年目で1軍で活躍するんだったら俺よりすごいよ。俺なんか最初の頃は先輩のお茶くみしたり、ボール磨いたりばっかりしてたよ。悩んで苦しんで、また考えて。まだまだ時間はある。1つ、1つ上に上がっているという実感を持ってやってほしい。

 この日のブルペンでは谷繁兼任監督、森ヘッドコーチ、そして臨時投手コーチを務めるフォークの神様、杉下茂氏までもが次々と浜ちゃんにアドバイスを送った。どうやら誰からも愛されるキャラの持ち主のようだ。48歳まで現役を続けて224個の白星を積み上げた工藤氏でさえ、プロ入り後の3年間は3勝しかしていない。長く険しいプロの道はまだ始まったばかり。先輩たちの言葉を成長の糧にする。【桝井聡】