走った。ロッテのドラフト5位、井上晴哉内野手(24=日本生命)は、115キロの巨体を揺らしながら激走した。三塁をまわる直前、三塁コーチを探した。本塁のすぐ脇で手をまわしているのを見つけた。「これ、ヤバイやつだ」。そう思いながら、最後の力を振り絞った。本塁に滑り込み、右拳を握りしめた。チームの今季1号は、まさかの足で生まれた。

 12日の紅白戦、7回の第3打席。打球は左中間へ上がった。中堅手の伊志嶺が捕球できず、ボールを蹴っ飛ばした。右翼手の清田も逆を突かれ、ボールは転々。イチローが米国の球宴で放ったような当たり。井上は50メートル6秒9、ベース1周16秒の足を懸命に動かした。「三塁からホームの間は覚えてない」。フェンスのある球場では人生初のランニング本塁打だった。

 日本生命のチームメートだった巨人小林からのメールが刺激になっていた。前夜、紅白戦で初打席初安打を放ったことを知らされた。気負いは空回りし、第1打席は3球三振。しかし、「それで冷静になれた」と、第2打席は左中間への適時二塁打。そして第3打席には観客のハートもつかんだ。この日は2打点で、4番の仕事も果たした。

 いきなりの存在感に伊東勤監督(51)は「自分のスイングができるだけでもいいと思っていたけど、結果もついてきた。できる限りは帯同したい」と、15日の振り分けを前に1軍に残留させる考えを明かした。まさに一発回答。やはり、ただ者ではない?【竹内智信】