サードだってある!

 阪神は26日、沖縄・宜野座と高知・安芸で行っていた春季キャンプを打ち上げた。沖縄では、和田監督がMVPに新井貴浩内野手(37)を選んだ。実戦4試合で11打数9安打と絶好調。ハツラツとした動きに、指揮官は三塁起用の可能性も見せた。新外国人マウロ・ゴメス内野手(29=ナショナルズ3A)が故障離脱する中、16年目が若々しい。

 南国の太陽も祝福した。小雨が舞った最終日、一本締めは青空だった。若手の底上げをテーマにした鍛錬の日々で、最も輝いていたのは37歳のベテランだ。MVPと聞いた新井貴は「恥ずかしいです」と苦笑した。打ったからだけじゃない。声も出た。よく動いた。気持ちの張りは、周囲に十分に伝わってきた。「選考委員」の指揮官は当然と言わんばかりだった。

 和田監督

 MVPになるとお兄ちゃん。体を絞ってキレのある動き。打撃コーチ時代から見ていて一番だった。期するものがあると思うし反骨精神もある。その中で練習での姿勢、声出して中堅若手を引っ張るぐらいのものを見せてくれた。若い選手がダメということじゃなくて、それ以上の充実感を見せてくれた。

 一塁には「4番候補」としてゴメスが来た。競争に負ければ、ベンチも覚悟しなければいけない。打撃フォームは両足の幅を小さく内股にし、バットは約2センチ長くした。挑戦者の姿勢で、紅白戦を含む実戦4試合では驚異の打率8割1分8厘をマーク。まさに充実の26日間だった。

 新井貴

 ケガなく、制限することもなく、キャンプをおくれたのが一番。去年はキャンプをできなかったので。肩も全く問題ない。力抜いて下半身で打つのはできている。

 1年前は安芸で打ち上げた。右肩痛や背中の張りと闘い、リハビリ中心の2月だった。今年は違う。ノックでは一塁から三塁へ勢いのある送球を続け、ファーストミットじゃなくグラブをつけた三塁での特守もこなした。ゴメス加入から三塁起用を否定し続けていた虎将も、ついに「サード新井貴」の選択肢が出てきた。

 和田監督

 このキャンプでミットをグラブに持ち替えて、打つだけじゃなく守備練習にも力を入れてやってくれた。なんかあった時にできるところまで、一生懸命やってきている。

 開幕まで1カ月。一塁争いはハイレベルになった。その火花は、新井良と今成らが競う三塁に飛び火する可能性もある。これこそが、和田阪神が求めていた競争の活性化だ。若虎に背中で伝えた16年目の春。新井貴の充実した笑顔が、きっと虎を助けてくれる。【近間康隆】