<楽天3-2ソフトバンク>◇6日◇コボスタ宮城

 故郷に朗報を届けた。楽天銀次内野手(26)が2-2の8回1死一、三塁で、ソフトバンク岡島から決勝の右前打を放った。開幕から打撃不振が続いていたが、カード勝ち越しと2位タイ浮上に貢献した。この日、出身地の岩手では、三陸鉄道の全線運行が再開。復興へ向けた祝福ムードに、勝利で花を添えた。

 銀次の気合は最高潮に達した。2-2の8回1死一、三塁。打席に向かう直前、星野監督に耳打ちされた。「振り切れ。当てに行くな」。さらに、頭をぱちんとはたかれた。「あれで吹っ切れました。中途半端な打撃になっていた」。それまで3打席凡退。3回1死一塁では、遊ゴロ併殺だった。名誉挽回の好機。もう併殺だけはごめんだった。カウント1-0からの2球目、ソフトバンク岡島の内角直球を、言われたとおり振り切った。右前に勝ち越し打だ。直前に追いつかれた嫌な流れを断ちきった。

 一塁上で両腕にグッと力を込めてポーズを取った。やっと笑顔が戻った。昨季、初の打率3割で不動の3番となったが、その分、内角への厳しい攻めが増えた。開幕から打率2割台前半と低迷し「守りの人ですよ」と、自嘲気味に漏らしたこともある。ただ「内角が多くなるのは分かっていたこと。いかに厳しいところに手を出さないか。これを乗り越えないと、ずっと攻められる」とキッパリ。むしろ、もうひと皮むけるチャンスと捉えている。

 前向きだから、大震災に遭った故郷にも朗報を届けられた。岩手・普代村出身。その三陸では、この日、北リアス線の不通区間が再開。三陸鉄道は完全復活した。銀次は「子どもの頃、むちゃくちゃ乗りました。久慈に遊びに行く時とか」と懐かしんだ。実家の前には、水産加工の工場があった。毎日、働く人を見て育った。一番の夢は、プロ野球選手ではなく漁師だった。「網を引きたかった。働く男って格好良い」。そんな銀次が、大きな働きをした。勝利を呼ぶ一打に、普代村のファンも喜んだはず。「シーズンは始まったばかり。これから、もっと良いニュースを届けます」と最後まで笑顔だった。【古川真弥】