<広島5-0中日>◇12日◇マツダスタジアム

 広島がエース前田健太(26)のアクシデントを乗り越えて中日に勝ち、再び単独首位に立った。先発した前田は右肘の張りを訴え、5回1安打無失点で降板。緊急事態に陥ったが、6回からは救援陣が無失点リレーで、エースに白星を運んだ。試合後、野村監督は最悪の場合、前田の出場選手登録を抹消する可能性も示唆した。

 突然、エース前田が姿を消した。6回のマウンドに2番手中田が駆け上がる。早くも勝利の予感にウキウキし始めていた2万4070人の観衆は何が起こったのか分からず、表情に「?」マークを浮かべた。

 前田

 ちょっと大事を取って。ごまかしながら粘り強く投げられていたんですが…。5回終わった後に、厳しいなと思った。

 1回は最速149キロを記録し、2死一、三塁を無失点で切り抜けた。2点リードをもらった2回以降は無四球無安打に抑え込んだ。変化球主体で打たせて取る配球に切り替え、5回をわずか66球で1安打。5回裏に9番打者として打席に立った後、自ら降板を申し出た。実は慢性的な右肘裏の張りが強まり、登板前から痛みを抱えていた。

 昨季は3月のWBCでフル稼働した影響もあり、右腕の張り、右脇腹の違和感に悩まされた。4月20日には「右上腕三頭筋筋膜炎」で予告先発されていた巨人戦登板を回避していた。今回はマツダスタジアムでチームドクターによる超音波検査を受け「右上腕三頭筋の付着部炎」と診断された。野口チーフトレーナーは「シリアスなものは見られなかった」と説明。前田本人も「そんなに大ごとではないと思っている」と話した。ただ、1年前と同じ右腕部の痛みだけに、決して楽観はできない。

 2、3日は1軍に同行し、アイシングと電気治療で様子を見る。中6日で19日DeNA戦に向かう見込みだったが、登板回避が濃厚となった。野村監督は「(登板)間隔を延ばす可能性はある。もっと悪いようなら、登録を外れるかもしれない」と、最悪の場合、出場選手登録を抹消する可能性にも触れた。

 チームは救援陣が緊急降板をカバー。1回に2点、8回に3点を挙げ、再び単独首位に立った。今季2勝目をプレゼントされた前田は「リリーフの人に迷惑をかけた」と神妙な表情で感謝した。指揮官は「いいようにいってくれることを願う」とナインの総意を代弁。23年ぶりのVに向け、仲間はカープの底力を証明してくれた。絶対的エースとして、長期間の空白を作るわけにはいかない。【佐井陽介】

 ◆前田の故障

 故障での登録抹消は過去3度ある。10年8月21日、ハーラーダービートップタイの12勝を挙げていたが、右手中指のマメのため登録抹消。最短の同31日に復帰した。昨年4月20日は右上腕三頭筋筋膜炎で予告先発を回避して翌日に抹消。6月2日は右脇腹痛のため抹消された。昨年は春季キャンプで右肩の疲労がありながらもWBCに突入し、シーズン終盤にはへんとう炎での発熱、右手中指の血マメ、腰の張りなどがあったが、中4日の登板にも耐えながらチームをCSに導く活躍を見せた。