<広島2-8阪神>◇15日◇マツダスタジアム

 勝負の均衡を破ったのは、阪神3番鳥谷敬内野手(32)のひと振りだ。同点の5回1死二塁。野村が投じた甘いチェンジアップを強くたたくと、打球は左中間をグングン伸びる。あと1メートルあれば柵越え…。惜しい弾道はフェンスを直撃した。二塁走者の大和は軽々と勝ち越しの生還だ。

 狙いすました適時二塁打だった。「真っすぐとチェンジアップが多い感じだった。チャンスだったし、積極的に行こうと思った」。緩急をつけた、体を前後に動かされる揺さぶりにも動じなかった。1回。2、3球目はいずれも低めのチェンジアップ。際どいコースだったが、完璧に間合いを計って見送っていた。野村の配球の傾向を読み切り、自らの懐で勝負できた。

 開幕から低調だったが、つないで、走者をかえせる本来の姿を取り戻した。和田監督も「トリが大きい。塁に出るだけじゃなく、勝負強さも戻ってきたので。内容も良くなっている」とたたえる。この日は3四球を選び、昨年まで3年連続でリーグ最多の四球数を誇る男の本領を発揮した。

 またも、逆方向への安打だった。今季19安打は左翼方向に10本、中堅へ4本、右翼方向に5本だ。虎をマークする他球団スコアラーは「あえて逆方向に打って状態を上げようとしているように見える。これで引っ張り出したら怖いですね」と分析し、上昇気配を警戒する。球を呼び込んで打てる鳥谷は「ゴメス、マートン、良太が好調ですし、後ろへつないでいくという気持ちで打席に入りました」と言う。3割打線に復調したリーダーが加われば「鬼に金棒」だ。【酒井俊作】