<阪神7-5ヤクルト>◇19日◇甲子園

 よっ選手会長!

 阪神上本博紀内野手(27)が6回1死一、二塁で決勝の中前適時打を放った。目の前で新人梅野が敬遠されて、燃えないはずがない。冷静に、冷静に…呪文のように心の中で唱えて、初球をたたいた。5点を先行されても、なんの。痛快な大逆転勝利で2位に再浮上した。

 ボルテージは最高潮だった。序盤の悲劇を、幸せの結末へ転じさせたのは上本だった。クライマックスは6回、同点の1死二塁で新人梅野が敬遠気味に歩かされた。満員の甲子園。スタンドは6年目の「意地」を見せたかった。「冷静にと言い聞かせて」。初球130キロをきれいに中前へ。0-5からの見事な逆転劇、主役は虎の選手会長だった。

 上本

 前の打席が悪かった。右方向を意識しすぎて下から出ていた。自然に打席に立つようにして、センター返しの気持ちでした。

 修正の決勝打だった。3回1死二塁で空振り三振。4回も2死一、二塁で遊ゴロに倒れた。試合前まで打率4割7分6厘と得意の左腕石川に、右打ちの過剰な意識がバランスを崩していた。得点圏での「三度目の正直」とばかりに好球必打。初球を打てば今季5打数4安打と積極性が実っている。

 西岡が開幕カードで負傷した。初先発した1日中日戦の練習中、和田監督に呼ばれた。5分ほど話した最後に「頼むぞ」と右肩をポン。1番打者の心得を注入された。バットを短く持った。「ひと押しになるから」と構えでは浮かせ、スイング時に添えていた右手人さし指も、最初からバットを握るようにした。「確実性は増すので」。指1本の変化。魅力だったパンチ力より、高い確率を選んだ。

 決勝打の直前、あの時と同じように2人でヒソヒソしていた。指揮官はベンチを出て、ネクストにいる上本にアドバイスした。

 和田監督

 期するものもあっただろうね。それまで内容が良くなかったけど、積極性というか集中して、持ち前の勝負強さを出してくれた。今年はチームに諦めない強い気持ちと、はね返す力がついている。

 20試合を貯金4で終えた。甲子園7連勝。6番まで打率3割以上が並ぶ猛虎打線には、熱いハートが宿るリードオフマンがいる。【近間康隆】

 ▼阪神は本拠地甲子園での今季初戦4月8日DeNA戦に敗れた後、翌9日同戦から同球場で7連勝。これは10年7月27日横浜戦から9月2日同戦にかけて7連勝(1分け挟む)して以来、4年ぶり。8連勝なら、06年9月9日横浜戦から同29日中日戦に記録して以来となる。なお、5点差逆転勝利は、13年4月5日広島戦での7-6以来。今季逆転勝利は5度目で、中日と並びセ・リーグ最多。