<阪神8-7ヤクルト>◇20日◇甲子園

 バットに1度も当てさせなかった。9回1死でヤクルトのバレンティンを迎えると虎の守護神、呉昇桓投手(31)の集中力はピークに達した。初めて1点リードでの登板。本塁打を浴びれば同点だった。1球ごとに虎党の大歓声が響き渡り、マウンドを蹴り上げるフォームは躍動感を増していった。

 初球、146キロの高め直球で空振り。2球目はスライダーが外れカウントは1-1。3球目は外角低めのスライダーで空振りを誘った。追い込んでから、決め球は外角へ大きく逃げるスライダーだった。この日2発を放りこんでいたバレンティンのバットは、かすりもしなかった。

 呉昇桓

 走者がいないときのバレンティンは大きいのを狙ってくる。失投しないように気をつけて投げました。1点差は一番集中していかないといけない。

 9回を9球、3者凡退で締めチームは3連勝。そのすべてでセーブを挙げた。3連投も問題なしだ。タフさには自信がある。韓国では「日本よりも飛んでいたと思う」ボールと、「ロッカーもグラウンドも狭い」球場でセーブの山を築いてきた。しかもチームの移動はすべてバス。ナイター後は深夜11時に出発し、午前3時ごろに敵地に到着することも頻繁にあった。

 呉昇桓

 疲れとか3連投は、もともと自分は関係ないし、問題ない。気にしないので。気分的にはいい気分です。

 広島遠征中には江口通訳を連れて食事に出かけた。行き先は激辛で知られる広島つけ麺。「すごく辛いものがあると聞いて行った」。当然のように一番辛いメニューをオーダーしたが「全然辛くなかったよ」とケロリ。普段から韓国の知人には「日本の食事はおいしい」と話すなど、生活に不自由はない。9回にはタフでホットな男が構えている。【池本泰尚】