<中日4-1阪神>◇23日◇ナゴヤドーム

 戦力外男の、そしてはい上がる開幕投手の、意地を見た!

 中日川上憲伸投手(38)が今季5度目の先発で、昨年の8月22日広島戦以来、244日ぶりの白星を手にした。2度の満塁機も気迫で抑え、6回を3安打無失点で投げ抜いた。元エースの復活星で、勝率5割に復帰。ナゴヤドームで負け越すわけにはいかない。

 久しぶりのお立ち台に上がった憲伸は、無邪気に笑った。「遅いですけど、ようやくですけど…最高にうれしい」。岩瀬から受け取ったウイニングボールを大事そうに握りしめた。

 崩れそうで崩れなかった。4回に続き、6回にも四球絡みで1死満塁のピンチを迎えたが福留、梅野をカットボールで内野フライ。右手を握りしめ絶叫した。全盛期をほうふつとさせる「憲伸ガッツポーズ」が飛び出すほど、気合満点だった。

 「リズムに乗れてない投手だし、四球は覚悟して、いいやと思った」。四球を出しても切り替え、目の前の打者に集中。「去年よりも曲がりが大きくなった」というスローカーブも、打者を幻惑した。熱くても頭は冷静。6四死球を与えたが、1度も本塁を踏ませなかった。

 恩に報いた。1度は戦力外通告を受けながらもチームに戻ってきた。「ドラゴンズでまた一緒にしたい。そういう気があるならGMに相談する」-。昨年11月。電話の相手は谷繁兼任監督だった。最初の仕事が川上を呼び戻すことだった。熱いメッセージがきっかけとなり、再びナゴヤドームで戦うことを決断。お立ち台の川上は「いろんな意味で谷繁監督のリードを信じていた。最終的には胴上げしたい」と声を弾ませた。

 谷繁兼任監督もうれしさを隠さなかった。開幕投手が“5度目の正直”で白星を手にして「やっと勝ちがついて、流れ的にはよくなる」とひと安心。川上に勝たせたかった、と問われ「そういうものはみんなあったと思う」と答えた。気迫の投球が勝率5割復帰を呼ぶ。さらに浮上する原動力となるのも、背番号11をおいて他にいない。【桝井聡】