<巨人1-9ヤクルト>◇4月30日◇東京ドーム

 ヤクルトがリスク覚悟の勝負手を打ち、快勝をつかみ取った。小川淳司監督(56)が巨人先発の左腕セドン対策として、右打者を8人並べた。4月26日に1軍昇格したばかりの内野手、野口を中堅に置くなどの大胆采配が的中し、セドンを3回途中でKOした。低迷した4月に「受け身になるとやられる」と痛感。連敗阻止のために取った積極采配で得た白星を、5月攻勢の兆しとする。

 鮮やかな集中攻撃にも、小川監督の表情は動かなかった。3回1死二塁。8番野口が快足を飛ばし、巨人坂本の焦りを生んで遊ゴロを内野安打に変えた。徹底させた早いカウントでの直球狙いもはまって、セドンを攻略。この回打者11人で5点を奪い、「見事だった。みんなよくつないでくれた」と冷静に振り返った。

 試合前に、すでにセ・リーグの「王」巨人を倒すために動いていた。左腕対策で、3番の川端以外は右打者を並べる定石の中に、妙手をしのばせた。昨季は1軍未出場で内野手登録の野口を「8番中堅」で抜てき。1軍昇格は4日前で、外野手での先発は12年9月22日巨人戦以来という、意外性ある一手だった。

 思い切った采配の下地には苦い記憶がある。16日からの9連敗は、リードを守れずに敗れたことから始まった。「連敗の始まりはいつもそう。受け身になりがちだけど、手を打っていかないと」。手堅くいこうとするほど、淡泊な試合になって黒星を重ねていた。

 そんな低迷期に、偉大な「勝負師」の考えに触れた。移動中に読破した将棋の羽生善治3冠(43)の本に「リスクを取らないことが最大のリスク」という意味の言葉があった。「野口も(状態が)良いから上がってきたんだから、使わないと。使わなければ勝負手にはならない」と、リスク覚悟で野口にかけ、見事3安打と期待に応えてくれた。前日29日の逆転サヨナラ負けを引きずらないためにも腹をくくっていた。

 継投でも攻めを貫いた。7回1死一、二塁では「巨人は火が付いたら何点取られるか分からない。続投でも良かったかもしれなかったが迷いはなかった」と好投していた古野を下げた。攻めの継投で無失点に抑え、流れを断ちきった。

 巨大戦力に対して各自が「と金」となって勝利した。それでも借金は9で、故障者復帰のメドは立たない状況。苦しい戦いは続くが「とにかく目の前を全力で勝ちにいくしかない」と、攻め続ける。【浜本卓也】