<ソフトバンク2-1日本ハム>◇6日◇ヤフオクドーム

 ソフトバンクが、世にも奇妙な形で今季2度目のサヨナラ勝ちだ。1点を追う劣勢の9回、1死から3連打でまず同点。さらに松田宣浩内野手(30)が三振と暴投による「サヨナラ振り逃げ」をマークして3連勝を飾った。負ければ首位陥落の土壇場で、選手会長がサプライズを引き起こした。

 誰もが予期せぬエンディングだった。同点に追いつき、押せ押せのヤフオクドーム。1死二、三塁で、松田のバットはカウント1-2から、日本ハム増井のフォークに空を切った。三振か。そう思われた瞬間、ワンバウンドして捕手大野がはじいたボールがバックネット方向に転がっていく。腕をぐるぐる回して三塁走者の明石にゴーサイン。サヨナラのホームインだ。あっという間に歓喜の輪ができた。

 松田は興奮してナインとハイタッチ。一塁へ走っていなかったが、公式記録は「振り逃げ(三振と暴投)」とされた。振り逃げサヨナラ勝ちは、94年イチローがマークして以来20年ぶり2度目の珍事。うれし恥ずかしの顔だった。

 「え?

 史上2度目なの?

 いや、打って決めたかったな~。何と言っていいのか…。複雑ですね。三振して頭が真っ黒、後逸してさらに真っ白。よう分からんかった。だって1死二、三塁から三振ですよ。勝ち越せなかったら延長になってたかもしれない」

 三振して殊勲者。ある意味「持ってる」選手会長は、胸を指さして「左はうれしい、右は悔しい。半分マンですわ」とお笑いコンビ「ペナルティ」のワッキーのギャグを持ち出した。

 2週間前にプロ初勝利を献上した浦野を打ちあぐねた。2回まで3安打も、その後は8回まで3者凡退。負ければオリックスに抜かれ首位陥落だったが、最後に思わぬドラマが待っていた。秋山監督は逆の立場に置き換え「怖いな」とまずうなり、こう続けた。

 「まあ、野球は最後の最後まで分かんないな。三振とワイルドピッチだからな」

 野村元楽天監督は「勝ちの不思議の勝ちあり」と言った。まさにこの日がそれ。黄金週間と重なった今季初9連戦は5勝3敗と勝ち越し決定。この勢いは、逃げていきそうにない。【大池和幸】

 ▼ソフトバンク-日本ハム戦は9回1死二、三塁、投手増井の暴投で三塁走者の明石が生還、ソフトバンクがサヨナラ勝ちした。打者松田はカウント1ボール2ストライクから空振り三振。記録は「三振と暴投」による振り逃げ。「振り逃げでサヨナラ」は94年6月12日オリックス-ロッテ戦のイチロー以来20年ぶり、プロ野球2度目。前回は「三振と捕逸」のため「三振と暴投」では初となる。

 ◆前回の振り逃げサヨナラVTR

 94年6月12日のオリックス-ロッテ12回戦(神戸)3-3の同点で迎えた10回裏2死満塁、打者のオリックス・イチローはロッテ成本の低めフォークに空振り三振した。しかし、捕手定詰がボールを後逸。三塁走者の本西が本塁へ滑り込み、イチローは振り逃げで一塁に到達。プロ野球初の「振り逃げでサヨナラ」となった。