<DeNA5-3ヤクルト>◇9日◇横浜

 フルスイングに迷いはなかった。1点ビハインドの5回1死一、二塁、DeNA梶谷隆幸外野手(25)は、木谷の142キロの直球を振り抜いた。右翼席への逆転の3ラン。ベンチではお決まりのあごタッチで迎えられた。「先輩がつないでくれたので思いっきり行こうと思った」とヒーローは声を上げた。

 すくい上げるスイングを習得し、今季7本のアーチをかけた。昨季も2カ月間で16本塁打を放ったが、もともとはホームラン打者ではなかった。開星高校時代は通算10本塁打。1発を期待される選手ではなかった。「高校の友達に会うと『どうしたん?

 そんなに飛ばすようになって』と驚かれる」と言う。

 07年に入団、2年間は2軍でも本塁打ゼロ。そんな梶谷が変化したのはプロ入り5年目の11年。まだ1軍で1本塁打だった。けがが重なりしばらく野球をできない日が続いた。「このままでは終わる」と感じ、思い切って大好きなメジャーやプロで活躍する選手を参考にした。ダウンスイングからレベルスイングに。「素振りはアッパー気味に振る。ホームランを打てて、プロで活躍する選手を見ると、多くの選手が下からバットが出ている。今で言うなら(巨人)阿部さんもアンダーソンだってそう。ロビンソン・カノも参考にする」。

 12年は2本。徐々に進化が出てきた。今では中畑監督から本塁打を期待されるまで成長した。梶谷の活躍で今日10日の試合を勝てば4月12日以来の最下位脱出。「自分がチームの起爆剤になれば」。開花した25歳の大砲のバットがチームの勝利の鍵を握ると言っても過言ではない。【細江純平】