<阪神3-4オリックス>◇6日◇甲子園

 セ・リーグ記録の快投も報われなかった。阪神エース能見篤史投手(35)が、セ史上4人目となる4試合連続2桁奪三振の快挙を達成。しかし、8回途中で交代。チームは8回に2番手福原がT-岡田に逆転3ランを浴びての敗戦。オリックスとの「関西ダービー」に敗れ、これで10カード連続の初戦黒星となった。

 快挙達成の瞬間も、いつもと同じだった。能見らしく大きく、ゆっくりと振りかぶる。右足を上げると、一瞬の間を置いて一気に前へ。7回、先頭の代打中村を追い込むと、内角低めへ落とした。10個目の三振。球史に名を刻む記録にも「いっぱいいっぱいだった。(初回から飛ばして)積み重ねてきていたから」と表情が変わることはなかった。

 何球投じようと、踏み出す右足は寸分も乱れない。プレートは一塁側ギリギリの部分を使う。さらに、能見ならではの特長は、普通のサウスポーよりも、踏み出し足(右足)が一塁側方向に着地することだという。打者は突然腕が現れる感覚にとらわれる。この日の最速は142キロだったが、差し込んでバットを折った。球速が出なくても、打者を狂わせている証拠だ。

 そのフォームも再現性が高くなければ、快挙には届かないはずだ。独特のフォームについて、甲子園を管理する阪神園芸の関係者も証言する。「能見が着地する所のスパイク1足分くらいの土を入れ替えることもよくあります」。定期的に行うマウンドの土を起こし固める作業。硬く、傾斜を感じられるマウンドを好むエースのための作業は、わずか1足分で終わることもあるという。3回には平野恵の打球が左足甲を直撃したが、狂いが生じることはなかった。

 フォア・ザ・チームの左腕は個人記録に関心を示さなかった。8回に2点を失ったものの、7回1/3を投げ6安打2失点。ただ、大歓声に包まれての降板にも、笑顔はない。2番手福原が抑えきれず、逆転3ランを食らっての敗戦。和田豊監督(51)は「結果がすべてだから。これは俺の責任。それでも明日は来るわけだから。明日、負けるわけにはいかない」と、必死に明日を見据えた。【池本泰尚】

 ▼能見が5月16日DeNA戦から4試合連続2ケタ奪三振をマークした。連続2ケタ奪三振のプロ野球記録は91年野茂(近鉄)の6試合だが、セ・リーグで4試合連続は71年江夏(阪神)94年紀藤(広島)95年ブロス(ヤクルト)に次いで4人目のタイ記録となった。現在、能見は35歳0カ月。2ケタ奪三振を4試合以上続けたのは10人、20度目だが、これまでの最年長はブロスの29歳5カ月で、全員が20代で達成。30代で、4試合連続2ケタ奪三振を記録したのは初めてだ。