<広島3-10ソフトバンク>◇6日◇マツダスタジアム

 瀬戸際男がソフトバンク交流戦初となる1イニング9得点を呼んだ。3回にソフトバンク鶴岡慎也捕手(33)がプロ初となる1イニング2長打を放つなど打者12人で6長短打を集中。4年ぶりの1イニング9得点で試合を決めた。セ・リーグ首位広島に圧勝し3連勝。パ首位オリックス、交流戦首位の中日に0・5ゲーム差のままピタリ追走している。

 移籍後初めて「打てる捕手」ぶりを発揮した。2点を追う3回、先頭の鶴岡が左越え二塁打で口火を切った。明石ら3本の適時打で4点を奪い逆転。さらに2死満塁で、この回2打席目の鶴岡が広島九里の直球を右中間へ。今度は走者を一掃する適時三塁打だ。試合前まで打率1割6分、8打点。今季マルチ安打すらなかったが、1イニング2長打。「プロ初です。久しぶりに芯に当たりました」と笑った。スコアボードには交流戦で初めて「9」の数字が輝いた。

 打撃も期待され、日本ハムからFA移籍。開幕マスクを任されたが、極度の打撃不振もあり、気付けば出番は中田の専属捕手で週に1度。その中田と前回組んだ5月31日ヤクルト戦では1回2/3で10失点。鶴岡も3回で交代させられ、打撃だけでなく配球面でも信頼を失った。

 チャンスは突然やってきた。3日巨人戦で正捕手細川が自打球で左膝を打撲。4日に出場選手登録を抹消された。打つだけでなく、鶴岡は初コンビの帆足を9回3失点。チーム55試合目で先発投手を初の完投に導いた。

 気配りの男だ。細川とは自主トレ時期からコミュニケーションを欠かさない。今年の年賀状はソフトバンクの全選手に送った。その直後に人的補償に藤岡が選ばれると、慌てて福岡の郵便局に連絡し回収した。札幌に家族を残し福岡へは単身で来た。「慣れるまで1年はかかるかも」。新天地で苦労しながらも努力を続ける鶴岡に、ようやくスポットライトが浴びせられた。【石橋隆雄】

 ▼ソフトバンクの1回9得点は10年6月29日ロッテ戦の5回表に10得点して以来。過去4度優勝している交流戦では史上最多。これまでは05年5月20日阪神戦の6回裏に8得点したのが最多だった。