<中日6-3楽天>◇7日◇ナゴヤドーム
24球中、ボール球はわずか5球。制球難に苦しんだ楽天松井裕樹投手(18)を変えたのは、過去の自分だった。登録抹消された4月24日。仙台市内の寮で落ち込んでいると、2軍コーチらが訪ねてくれた。与えられたのは励ましの言葉ではなく、3本のVTRだった。
失意の中、見つめた先の映像は衝撃的だった。スカウトが撮りためていた高校3年春と夏のフォーム、そして前日23日に8四球を出した西武戦の姿が順番に映し出された。言葉が出なかった。なぜ制球が安定しないのか、一目瞭然。最後の映像は高校時代に比べ、リリースポイントがスリークオーター気味に下がっていた。本来は左腕が地面と垂直になるほど、高い位置からボールを離す。まるで別人だった。フォームが崩れれば、力はうまく球に伝わらず、制球は安定しない。「完全に(腕が)横振りだった。本来の姿に戻していこう」。2軍で、本当の松井裕樹を取り戻す時間が始まった。
まず、練習中のキャッチボールから変えた。リリースが戻るように、投げる時の重心と腕の振り方を常に意識した。時には遠投も入れ、感覚を磨いた。「2軍にいる意味を考えて過ごさないと」と1球たりとも無駄にしなかった。高校3年間投げ続けた形を、体がやっと思い出した。酒井2軍チーフ投手コーチも「すっかり本来の躍動感ある良いフォームになった」と太鼓判を押した。
2回1安打無失点の復帰登板は「しっくりくる投げ方」と話すフォームで、ひとまずクリア。「0に抑えられて良かった」。挫折を乗り越え、晴れやかな笑顔も取り戻した。【島根純】



