<巨人1-3西武>◇7日◇東京ドーム

 孝行息子が、西武田辺徳雄監督代行(48)に初勝利を届けた。2軍打撃コーチ時代の教え子、栗山が1点リードの3回に1号ソロを放てば、1点差とされた直後の6回に中村が9号ソロのそろい踏み。6回からは1イニングずつの小刻み継投で2点差を守りきった。投打がかみ合っての勝利で、「新生ライオンズ」が本格スタートを切った。

 ずっと腕組みをして見守った田辺監督代行の顔がようやくほころんだ。ウイニングボールを握り締め、笑顔でナインとハイタッチ。采配2戦目での初勝利に、「勝利の味というか…。厳しいゲームだったのでね。打つべき選手が打ってくれてよかったかなと思う。(投手陣も)よく抑えてくれました」と、選手の頑張りをたたえた。

 打ってほしいところで打ったのは“同期”の2人だった。先制打とダメ押し弾の中村と、今季1号を放った栗山は、同監督代行が引退後、初めて西武2軍打撃コーチに就任した02年の入団。二人三脚で育ててきた。早出練習では右の中村、左の栗山に同時にトスを上げてのティー打撃。そんな2人が12年の時を経て主軸を担うまでに成長し、指揮を執る試合で最高のプレゼントを贈ってくれた。「栗山の1号は長かったけどね。2軍時代、同じスタートだったので、2人が打点を挙げてくれて(当時を)ちょっと思い出しました」と少し照れながら明かした。

 愛弟子の思いも一緒だった。中村が「ファームでずっと一緒にやってきましたから」と言えば、キャプテン栗山も「田辺さんに1勝、というのをまず目標にやってきたので。本塁打より安打3本と言われてきましたけど、今日は勝敗を左右するところで打ててよかった」と笑顔をみせた。

 伊原監督が無期限の休養を発表した4日。田辺監督代行は「(勝率)5割を目指して戦っていく」と決意を示した。まだ借金は13。完済への道は長い。だからこそ栗山も中村も「どんどん勝っていかないと」と口をそろえた。同監督代行の覚悟も同じ。「ホッとしてなんていない。まだまだ試合は続くわけですから」と引き締めた。ウイニングボールの余韻はこの日だけ。巻き返しへの戦いは、ここからだ。【佐竹実】