<巨人8-1ロッテ>◇8日◇東京ドーム

 若い力で首位奪還だ!

 巨人先発の小山雄輝投手(25)が、プロ4年目で初の完投勝利を手にした。完封勝利目前の9回に失点したが、最後まで1人で投げ抜き、10安打6奪三振1失点で今季2勝目を挙げた。チームは、4月11日阪神戦以来となる首位へ返り咲いた。

 険しかった先発小山の顔が、やっと緩んだ。1点を失い、なおも9回2死一、二塁。ロッテ鈴木の左前へ抜けそうな飛球を亀井がダイビングキャッチ。幕切れは味方のファインプレーだった。小山は「甘くないんだぞ、ということ。まぐれの完封勝利より、こっちの方がいいです」と初完投を笑って振り返った。

 最大のピンチだった4回2死満塁。代打加藤を、ワンバウンドするフォークで空振り、3球で仕留めた。9回でも144キロをマークする速球を軸に、8回まで無失点。1軍に昇格した5月25日の日本ハム戦は同じく8回途中まで無失点で初勝利を手にしたが、原監督からは「1回だけでは手放しに喜べない」と言われた。この日は違った。指揮官は「若い力というのは巨人にとっての宝」と称賛した。

 昨季セ・リーグ優勝を決めた直後のビールかけの会場に、小山の姿はなかった。昨季10試合に登板し0勝2敗。参加の権利はあったが「自分はちょっと…」。さらに今年2月の沖縄キャンプ中、内海に「いつまでも若手とは見てくれない。りょうすけ(宮国)、ノブ(今村)が5回無失点に抑えたらそれ以上の内容と結果を出さんと」と自覚を促された。

 決意はブルペンの投球に表れた。2軍調整を続ける4月末から5月上旬。シーズン中は通常50球程度のところ、異例の200球を超える球数を投げた。投球時に体が開く癖を矯正した。「2軍で結果を出すことも大事だけど、その上で(1軍)通用する姿を目指している」と思いは強かった。

 この日失点した直後、原監督に「代わるか」と言われたが「行きます」と答えた。「中継ぎの人たちが楽になれれば」と責任感も貫いた。今季、チームで完投勝利を挙げたのは菅野だけ。内海が故障で離脱する中、その思いも背負って腕を振り抜いた。そしてチームを2カ月ぶり首位へ導いた。【栗田尚樹】