<巨人4-6阪神>◇13日◇東京ドーム

 最後まで決定打を許さなかった。1-3で迎えた6回2死一塁、阪神岩田稔投手(30)のフォークがストーンと地面すれすれに落ちた。ロペスのバットが豪快な音を立てて空を切る。とどめの一撃を期待していた敵地のため息。無精ひげの左腕がひときわ、たくましく見えた。

 「先発として最低限の仕事はできたかなと思います。無失点でいけたら一番いいけど、本塁打がよく出る球場なので」

 2回にロペス、4回はアンダーソンに1発を浴びた。だが、いずれも走者なし。傷口は最小限だった。東京ドームならではの“ドームラン”と割り切って、次の打者へ向かっていった。

 お前しかいない-。全幅の信頼で託されたマウンドだった。首脳陣はローテーションを変更し、9連戦の頭、8日の広島戦を岩田に任せた。中4日で、この日の巨人戦にぶつけるためだった。広島戦では7回1失点で勝ったが、接戦だったこともあり113球を投げた。5日後、東京ドームのマウンドに立てるのか…。降板後、心配する首脳陣に岩田は言ったという。

 「いけます!」

 岩田のおとこ気が、敵地での巨人戦勝ち越しを呼んだ。6回まで7安打を浴びながら3失点。与四球は0。打たれても1球、1球、丁寧に投げ続けた。そして、その先に最高の結末が待っていた。自身に打順が回り、代打新井が送られた7回の攻撃。目の前で代打関本の逆転満塁弾が飛び出した。

 「セキさんがすごい当たりを打ってくれたので、鳥肌が立ちました」

 思わずベンチで身を乗り出した。これでチームトップタイの7勝目。中西投手コーチが「広島戦でも良かったし、当然、頭も考えている」と話すように、球宴明けの21日巨人戦で“後半戦開幕投手”を務めて、そのまま中5日で広島戦に登板するプランも浮上。後半戦の軸となりそうだ。

 08年に10勝したのを最後に2桁勝利から遠ざかっている。今季は若手と横一戦でスタートしたが、開幕直前の2軍戦で10失点し、先発ローテから外された。

 「開幕のことを思うと…。すごく悔しかったので」

 雌伏の時が粗削りの天才を磨き上げたのか。もう岩田の復活を疑う者はだれもいないはずだ。【鈴木忠平】