<オリックス1-2楽天>◇14日◇京セラドーム大阪

 楽天塩見貴洋投手(25)が全力投球で今季3勝目を挙げた。オリックス打線を相手に果敢に内角を攻め、7回途中2安打1失点の力投だ。5月3日のソフトバンク戦(コボスタ宮城)以来の白星で、チームに6月27日以来、大久保博元監督代行(47)には代行就任後、初の連勝をもたらした。

 決して逃げなかった。塩見はピンチを背負っても攻め続けた。平野恵に、この試合初安打となる二塁打を許した4回。1死三塁で迎えたのは3番ヘルマン。カウント1-1から懐への135キロ直球で腰を引かせると、ファウルを挟んでの5球目も再び内角への137キロ。最後は同じクロスファイアの軌道から沈ませたフォークで、空を切らせた。「甘くなったらダメなので、ボールでもいいと思って思い切り投げました」。続く糸井も空振り三振。強気の投球で難所を乗り越えた。

 立ち上がりからフルスロットルだった。「今日は気迫です。心の中ではずっと『おりゃ~!』と叫んでいました」と、5回までに奪った三振は8。最速は140キロながら、内角への直球とストライク先行の投球が、カーブ、フォークを生かし、オリックス打線を翻弄(ほんろう)した。

 「インコースに投げきるのが自分の本来の投球。今日はそれが出来ました」。左肩痛に悩まされ、1軍登板なしに終わった昨季。今季にかける思いは強かった。しかし、決意とは裏腹に結果が出ず、5月19日に2軍落ち。投球を見つめなおして取り組んだのは、「真っすぐのキレとコントロールを戻す」ことだった。2軍戦での登板後も走り込み、「量的には、上(1軍)の倍以上。キャンプぐらいですね」。流した汗を結果につなげるため、全力で腕を振り、臆することなく相手の懐へ投げきった。

 大久保監督代行は塩見をこう評する。「絶対手を抜かない男。(2軍時代に)土砂降りの中1000本ノックをやっても1球も抜いたことがなかった」。だからこそ、この試合で左腕に課したのは「1回からマックスでいくこと」だった。

 その期待に見事に応えた力投。塩見は「前半戦はふがいなかった。巻き返せるように頑張ります」と力を込めた。浮上するしかないチームに、力強い男が戻ってきた。【佐竹実】