<オリックス1-7楽天>◇15日◇京セラドーム大阪

 楽天辛島航投手(23)が“無安打”投球で、チームを今季3度目の3連勝に導いた。1回に四球に失策が絡んで先制点を献上も、7回までノーヒット投球。8回からは援護を仰いだが、無安打1失点(自責0)で6勝目を挙げた。制球に苦しみながらも抜群の粘り強さで、今季2連敗中だったオリックス打線を封じ込めた。

 7回での降板を告げられても、辛島は顔色を変えなかった。「(続投は)どっちでもよかったです。球数もいってましたし、点も取られていたので」。失点しながら無安打完投していれば、1959年(昭34)の阪神村山以来、史上3度目の“珍記録”だったが、こだわりはなかった。

 マウンドでも感情をあらわにすることはなかった。立ち上がりから制球に苦慮。1回2死走者なしから四球に捕逸と失策が絡んで1点を献上した。「調子自体はよくなかった。いろんな球種を使いながら、何とか抑えられました」。1回終了後には、この日スタメンから外れていた嶋からベンチでカツを入れられた。「『しっかり粘って行け』と言われました」。げきを胸に刻み、黙々と腕を振り切ることだけに集中。チェンジアップ、スライダーを駆使し、野手の好守にも助けられながら、7回まで「H」ランプをともさなかった。

 それでも大久保監督代行は、継投を決断した。辛島が与えた四死球は計5つ。内訳は初回の2者連続に、2回の先頭。そして3、6回の2死からだった。「四球を出さない投手はいない。そこでどう切り替えるか」。そしてこう続けた。「(無安打の)記録は関係ない。毎日日本シリーズのつもりで戦っている」。記録よりもチームの勝利を優先した判断。これは、さらなる成長を期待する左腕へのげきでもあった。

 辛島も、しっかりと受け止めていた。完投は、去年7月31日西武戦での5回降雨コールドによる1度だけ。9回を投げきったことはない。だからこそ「球数を減らして、完投出来るように頑張りたい」と力を込めた。今年、長男が誕生。チームだけでなく、1人増えた家族のためにも勝たなくてはいけない。次こそは最後までマウンドに立ち続け、白星をつかむ覚悟だ。【佐竹実】

 ▼楽天は8回1死までオリックス打線を無安打に封じたが、初回に1失点。失点しながらノーヒットに抑える「ノーヒットありラン」を達成していれば、64年5月13日近鉄が牧野-山本の継投で南海打線を無安打に抑えながら1失点して以来50年ぶり5度目の珍記録だった。楽天が相手を1安打に抑えたのは13年6月30日オリックス戦以来6度目。前回も相手先発は西だった。