<中日1-8阪神>◇15日◇ナゴヤドーム

 ついに壁を乗り越えた。阪神藤浪晋太郎投手(20)が、プロ初の完投勝利だ。中日相手に9回5安打1失点。その失点も味方の失策が絡み、自責はゼロ。チームトップタイの7勝目。自己最多の143球を投げ、13奪三振は最多タイ。終盤に息切れするパターンと別れを告げ、2度目の球宴に臨む。

 ゲームセットを空振り三振で迎えると、藤浪はグラブを数回たたいた。何度も口にしてきた完投への思い。2年目、通算38度目の先発マウンドで、ついに実現した。前半戦ラスト登板で9回5安打1失点(自責ゼロ)。自身3連勝で前半戦を締める直前、プロで初めて聞く「あと1球コール」に胸を躍らせていた。

 藤浪

 あと1人、あと1球。ちょっと特別な思いがありました。素直にうれしいです。うまく打者との間合いをつめられた。

 ようやくたどり着いた。高卒1年目の昨年は球数制限があった。それが撤廃された今季、最初に掲げた目標が完投だった。だが、試合序盤は好投しても打順が3巡目に入ると打たれるなど、壁に阻まれてきた。前回9日の広島戦では5点リードで迎えた8回に4失点。中西投手コーチから「お前、絶対完投できんわ」と吐き捨てるように言われた。完投に不可欠な体力と技術-。屈辱マウンドの次戦で、藤浪が両面を兼ね備えていることを証明した。

 ◆体力面の成長

 藤浪は小さな薬包を手に練習へ向かう。疲れにくくするサプリメントだという。普段の食事前には空腹を促すサプリメントを飲む。影響を受けたのは、レンジャーズ・ダルビッシュ。「いろんなことに興味を持ってやられている。自分も独学で勉強したり、好奇心を持っていろんな人に聞いたりしています」。摂取するサプリメントに、他球団の選手も興味を持つほど。ルーキーイヤーで完投、完封を記録した憧れの人の背中を追い、自分なりに追求。この日9回にも球速は150キロを記録。プロ入り最多の143球にもバテなかった。

 ◆技術面の工夫

 序盤3回までは最速154キロの直球で押した。1回を3者連続三振で打ち取るなど、前半5回で9奪三振。それでいて球数は65球に抑えた。中盤は残像を利用しカットボール、スプリットが効果的に決まった。変化球でカウントを稼ぐと投球は楽になった。「かわす技術」を披露し、自己最多タイ13Kの奪三振ショーだ。

 藤浪

 いい形で前半戦を終われた。後半戦もこういう投球をしたい。

 完封は味方のミスで消えた。それは後半戦のお楽しみだ。藤浪は少しだけ自信をつけて、シーズンを折り返した。【池本泰尚】

 ▼阪神藤浪がプロ入り初完投勝利。昨年8月11日中日戦で9回まで投げたが、延長に入ったため完投はなかった。投球143球は6月17日日本ハム戦の136球を上回り最多。1試合13奪三振は前記日本ハム戦に並ぶ自己最多。阪神の投手が13奪三振以上をシーズン2度以上マークしたのは、72年江夏(2度)以来。