<オールスターゲーム:全パ0-7全セ>◇第1戦◇18日◇西武ドーム

 3年連続12回目の出場を果たした中日谷繁元信兼任監督(43)が、球宴最年長安打をマークした。全セの9番でスタメンマスクをかぶり、3回1死一塁で左前打。一塁走者の堂林とランエンドヒットを決め3点先制の土台を作った。兼任監督としては06年ヤクルト古田以来8年ぶりの球宴出場。勝利にこだわる全セ原辰徳監督(55)の先発起用にこたえた。

 扇の要に谷繁が座った。「毎年、最後だと思っている。下手なプレーはできない。やるからには、抑える」。兼任監督は、全セ第1戦のスタメン捕手を任された重みを理解していた。広島前田に自軍の大野。左右の違いはあるが、両投手には共通項があった。腕の振りの強さ、強さと反比例して揺れ落ちる決め球、チェンジアップ。全パの猛者と駆け引きした。「真っすぐ勝負の風潮があったが、今は持っているボールで抑える方が正々堂々としている」と、老練なリードで無失点リレーの下地を作った。

 監督控室を用意された。「選手?

 監督?

 どっち?。選手として出ているので、何とか1本打ちたいね」とグラウンドに飛び出し、懸命に練習した。3回の第1打席。1死一塁でオリックス西に追い込まれた。ベンチの原監督が動いた。一塁の堂林がスタート。外角直球に負けず、ライナーで左前に運んだ。好機拡大のランエンドヒット成功は、43歳6カ月での球宴安打。オールスター最年長の記録を塗り替えた。「ヒットはおまけ。大事なのは抑えることだけど…、やった!」と無邪気に喜んだ。

 肝いりの監督推薦に応えた。原監督は「彼のキャリア、兼任監督という重責を務めていることに敬意を表した」と、今季の成績を度外視して谷繁を加えた。そして「(球宴の勝敗で決まる)ドラフトのウエーバー順がある。オールスターの勝敗は大事なんだよね」と、ファン投票選出の阿部を差し置いてマスクを託した。監督の望みは、そのまま谷繁の望みでもあった。「家族が西武ドームに来るんです。できれば初戦、お願いできませんか」と原監督に頼み、阿部も快諾し、晴れ舞台で躍動した。

 ベンチ上座の後方に仁王立ちして完勝を見届けた。「よっしゃぁ!」と真っ先に声を出し、ハイタッチした。原監督が「見事。素晴らしい。捕手谷繁として、役割を果たしてくれた」と目を丸くした。試合前の野球殿堂表彰式では、横浜(現DeNA)時代にバッテリーを組んだ佐々木主浩氏に花束を渡した。第一線に君臨し続ける26年目、43歳。特別な12回目の球宴になった。【宮下敬至】

 ▼9番捕手で先発出場した谷繁が3回に左前打を放って2点目のホームを踏んだ。兼任監督の先発出場は7番捕手の77年<3>戦野村(南海)以来で、セ・リーグでは9番遊撃の53年<3>戦白石(広島)以来、61年ぶり。現在、谷繁は43歳6カ月。球宴の最年長出場は80年<3>戦野村(西武)の45歳0カ月だが、43歳6カ月で安打は91年<2>戦で本塁打を放った門田(ダイエー)の43歳4カ月を抜く最年長記録。得点も前記門田を抜いて最年長記録となった。