<阪神3-0巨人>◇21日◇甲子園

 石仏が記念の花束を手に、少しほほ笑んだ。阪神の守護神呉昇桓投手(32)が後半戦、完封発進を決める9回締め。2安打されながら無失点で、球宴を挟んで5戦連続セーブの23セーブを挙げた。日韓通算300セーブの節目。巨人戦はこれで6戦、6イニングで無失点と、舞台が大きいほど鉄壁ぶりが際立つ。

 マウンドで梅野と手を合わせた。守護神呉昇桓は、ホッとした表情だった。9回2死一、二塁。代打高橋由を一ゴロに抑え、3点差を守りきった。来日23セーブ目で、日韓通算300セーブ。ベンチ前でナインに出迎えられると、やっと白い歯がこぼれた。花束を受け取り、手を挙げてファンの祝福の声に応えた。

 「チームメートが帰らずに拍手だったり、おめでとうと言ってくれて、特別な日になりました。チームメートや監督、コーチがやりやすい環境を整えてくれて、積み重ねることができた」

 口にしたのは、仲間への感謝の言葉だった。日本球界1年目。新しい環境にも順応し、すでにリーグトップのセーブ数を挙げる。決して自分の力だけではない。後ろを守る野手やつないだ投手陣、首脳陣やスタッフに敬意を表した。

 特別な日-。年長者を敬う意識が強い韓国で育ったストッパーは海を渡っても、生んでくれた母への感謝の気持ちを忘れなかった。7月15日、32歳を迎えた。韓国の習慣で誕生日には、長生きと母への感謝を込めて母親が出産後に回復食として食べる「わかめスープ」を食す。名古屋遠征に出ていた呉昇桓は、韓国にいる母を思いながらわかめスープを口に運んだ。「生んでくれてありがとう」。国際電話をかけ、思いを伝えた。

 後半戦開幕で大台に到達した。「300セーブを挙げるためにやってきたわけではない。積み上げる過程。これからもっとセーブを挙げていかないと」。逆転優勝のために守護神は右腕を振る。さらにセーブを積み上げる。【宮崎えり子】

 ▼阪神呉昇桓が日韓通算300セーブを達成。韓国球界最多の277セーブに、阪神での23セーブを合わせての到達となった。なお日本球界の最多セーブは岩瀬仁紀(中日)の398セーブでただ1人の300セーブ超え。米大リーグ最多はマリアノ・リベラ(ヤンキース)の652セーブで、300セーブは26人いる。