<広島3-4阪神>◇25日◇マツダスタジアム

 痛い敗戦にも光はある!

 広島ドラフト3位の田中広輔内野手(25)が阪神戦に先発し、藤浪から1発を含む3安打2打点と大暴れした。試合は2点リードの7回以降に3失点して逆転負け。2位阪神相手にエース前田での負けはあまりに痛いが、難敵藤浪キラーの誕生は大歓迎だ。

 元気いっぱい、という言葉が似合う。田中は疲労を一切感じさせないフルスイングを決めた。1点リードの6回1死。藤浪の初球、高めに浮いたカーブを見逃さない。「高めにうまく手が出た。こすった感じだったので入るとは思わなかったです」。高々と上がった飛球は真っ赤に染まった右翼席に吸い込まれた。

 1回は外角スライダーをミートし、三遊間を破る左前適時打で2点目をたたき出した。3回は外角低め151キロ直球を中前に打ち返した。そして6回、2戦連発となる6号右越えソロだ。

 「変化球を打ったから次は直球、直球を打ったので次は変化球かな、と思っていた」。見事な読み勝ちだ。「もともと、そこまで嫌いじゃなかったんで」。この試合までの対戦成績は8打数2安打ながら、この日は3打数3安打。「藤浪キラー」襲名をド派手に飾った。

 最高気温36度の午後2時過ぎ、勢いよくペットボトルの水を頭にかけた。「JR東日本、勝ちました!

 同期が活躍したんです」と笑顔を見せた。前日24日、昨季まで在籍したJR東日本が都市対抗野球3回戦でパナソニックに勝利。猛暑の中でも疲労を感じさせないスタミナは、社会人時代に培ったモノだ。

 「JR東日本は公式戦も含めて、年間110試合以上を戦うんですよ。他のチームは大体60試合とか80試合だと思うんですけど。そりゃあ、体力つきますよ。1年目は、ほぼ全試合に出ましたからね」

 自己管理も怠らない。遠征先では午前中の体幹トレ、ウエートトレを欠かさない。「体脂肪20%超えた時もあるので」。好物の甘いものを控え、社会人時代に日課だった晩酌もプロ入り後は休日前に限定。鍛えて減量を防ぎ、節制して増量を防ぎ、ベスト体重の70キロ前後を夏場もキープする。

 最後は接戦に敗れたが、試合前の時点で今季4試合で3勝を献上していた藤浪を6回3失点で降板させた。シーズンはまだまだ続く。「3本打ったのはまぐれですけど、嫌な印象は与えられたと思います」。藤浪キラーの誕生は必ず今後に生きる。【佐井陽介】