<中日5-6DeNA>◇28日◇ナゴヤドーム

 中日は、自力でのCS進出が消滅した。延長12回。1死二、三塁から6番手田島が白崎に左前打を浴びて勝ち越された。本拠地ナゴヤドームでDeNAに3連敗したのは98年9月以来(当時は横浜)。疲労の色が隠せない谷繁元信兼任監督(43)は「この状況を受け止めていくしかない。どうやって跳ね返すか。まだ確定はしていないじゃないですか」と必死に前を向いた。

 光はあった。敗色濃厚の7回に劇弾が飛び出した。3点ビハインドの2死一、三塁から身長171センチの2番工藤隆人外野手(33)が無我夢中でDeNA三浦の高め変化球をバットに当てた。舞い上がった打球は、右翼フェンス上部の黒色ラバーに直撃した。

 「ただ負けたくなくて意地でも打ってやろうと思っていました。たまたまホームランになっただけです」

 プロ10年目で記念すべき1号だった。日本ハム、巨人、ロッテと渡り歩いてきた苦労人が、土壇場の竜にネバー・ギブアップを示した。

 指揮官は大幅に打順を入れ替えた。7月16日阪神戦以来の先発となる工藤を2番に抜てきし、リードオフマン大島を3番に置いた。初回に2点を先制し、幸先よくスタート。ところが5回に守備のミスから1イニング5失点。このまま負けてしまうのか…。そんなムードを振り払ったのが伏兵の1発だった。

 首位巨人とのゲーム差は今季最大の10・5に広がった。借金はワーストの8。現実は極めて厳しい。だが、諦めた時点でシーズンが終わる。工藤のガッツが進むべき方向を示した。【桝井聡】