<楽天2-3ソフトバンク>◇29日◇コボスタ宮城

 4番の仕事だ。ソフトバンク李大浩内野手(32)の自身今季初となる延長での適時打が勝利を呼んだ。2-2の10回2死二塁。ファルケンボーグの直球を中前へはじき返した。打率リーグ5位ながら得点圏打率はワースト2位の責任を感じていた李大浩に笑顔が戻った。2位オリックスが敗れ、再び2・5差に広がった。

 話の切り出し方に李大浩の仕事への責任感、ここまでのふがいない思いがにじんだ。「なかなか重要なところで打てなくて、4番として久々にチームに貢献できた」。中堅に抜けていった決勝打。「試合を決めるという気持ちでいった」。地面をはった強いゴロにそんな思いが表れていた。

 10回だった。1死から今宮が右前打で出塁し、エンドランをかけて内川の遊ゴロで2死二塁。勝ち越し機をつくった。「今宮選手がしっかり仕事をし、二塁まで走った。内川選手はチームのため犠牲になって進めてくれた」。仲間がつなぐバトンの重みを感じ、打席に入った。カウント1-1。ファルケンボーグの直球に強振はしない。インパクト重視のスイングで仕留めた。「うれしかった」。簡素な言葉に“初仕事”の喜びがにじんだ。

 つなぎの打撃で打率は3割を保つ一方、得点圏はワースト2位といまひとつ。今季延長ではタイムリーはゼロだった。ペナント争いの佳境で生まれた1本が何よりうれしく、一塁ベースでは鳥越内野守備走塁コーチに力いっぱいのハイタッチをぶちかました。

 2点先行しながら楽天に追いつかれたタイトなゲーム。9回には守備でみせた。藤田の一、二塁間を抜けそうな打球をダイビング捕球し、サファテへトス。「大事なところ。集中していた」と笑った。練習中に“古巣訪問”にきたファルケンボーグから「バントをして」のジェスチャーでいじられたが、適時打でお返し。ファルケンボーグはさらに、鳥越コーチの置いてあったバットをこっそり奪い、放り投げるいたずらをしていた。同コーチの「バチが当たるぞ」との忠告通りの結果となった。

 接戦を制し、2位と2・5差。「一生懸命にやれば、いいものがついてくる。1打席1打席、1試合1試合にすべてをかけて戦いたい」。プロでは未経験の頂点へと李大浩が自らのスイッチをもう1度入れ直した。【押谷謙爾】