<巨人1-0広島>◇4日◇宇都宮
福井、力投報われず涙-。恩師である済美(愛媛)上甲監督の急死に思いを新たに、6回1失点と踏ん張った広島先発福井優也投手(26)は、それでも援護なく3敗目を喫した。首位巨人に3連敗で自力優勝の可能性が消滅し、阪神に抜かれて3位に転落した。チームにも個人的にも大事な1戦を白星で飾れず、福井は声を震わせた。
福井は目頭を押さえて声を詰まらせた。「今日は勝ちたかったです。負けたら意味がないので…」。こみ上げてくるものを必死で抑え、こぼれ落ちた涙を右手でぬぐった。天国から恩師が見つめる特別な夜。それは十分に分かっていた。だからこそ力投では許されない。勝ちたかった。
思いは投球に表れた。スタートからエンジン全開だった。1回1死から橋本に右前打を許したが、2回から4回までは無安打。最速149キロの直球に多彩な変化球で重量打線を黙らせた。
5回には右越え二塁打を放つなどバットでも貢献した。失点は5回1死一、三塁から長野の二ゴロの間に失った1点のみ。ベンチでもチームメートが近寄れないオーラを放った。野村監督も「しっかり試合をつくってくれた。1点はしょうがない。いい当たりならゲッツーだった」とたたえた。負け投手にはなったが、内容はあっぱれだった。
「緊張します」。そう言って試合に臨んだ。済美高の恩師である上甲正典監督が2日前に亡くなってから初めて上がるマウンド。この日は松山市内で葬儀・告別式が営まれた。監督が天国から見守ってくれる-。その思いを胸に必死で腕を振った。
1週間前の光景が焼き付いている。8月29日。知人からの緊急連絡を受け、チームを離れた福井は病床の恩師を見舞った。「その時は話が出来る状態ではなかった。耳は聞こえていて、話しかけると笑ってくれた。握手して帰りました…」。それが最後の別れになった。
チームは首位巨人に3連敗で3位に転落。自力Vの可能性が消滅した。巨人との差も4ゲーム差となった。ただ、2戦連続でゲームを作っている背番号11の力投は広島にとって光。オヤジのように慕ってきた恩師にその思いは十分に伝わったはずだ。【桝井聡】



