<DeNA2-0ヤクルト>◇10日◇横浜

 ついに虎のしっぽが見えてきた。DeNA山口俊投手(27)が9回を4安打に抑え、プロ初完封をプロ初の無四球で飾った。今季途中から先発に再転向し、前回3日の阪神戦に続く2試合連続完投だ。逆転でのクライマックスシリーズ(CS)進出へ、負けられない試合で快投をみせ、3位阪神とのゲーム差はついに3・5。前夜の久保に続く2戦連続の完封勝利で、チームに最高の弾みをつけた。

 山口がかつて浴びたブーイングは、大歓声に変わっていた。プロ初完封をかけた9回のマウンド。1番山田から、わずか11球で3者凡退に仕留めた。力強く右拳を握り締めながらも表情は崩さない。「正直、(気持ちは)完投も完封も変わらなかったです」。前回のプロ初完投に続く自分の記録より、勝利に導いた結果をかみしめた。

 唯一のピンチは2点リードの7回だった。連打を許して無死一、三塁。ベンチの指示は「1点OK」の中間守備だったが、これが火をつけた。「あの回くらいから完封を意識していたし、ゼロに抑える気持ちしかなかった」。雄平を内角146キロで捕邪飛。続く畠山はフォークで注文通りの併殺打。グラブを思い切りたたき、あとはラストスパートに入るだけだった。

 7月29日巨人戦から、カード第1戦は久保、第2戦は山口の組み合わせでローテを託された。これが6月15日の3勝目以降、勝ち星から遠ざかっていた右腕を成長させた。「久保さんの投球に、自分のイメージを照らし合わせながら投げてます。タイプが違うので久保さんからは『あの場面、俺は変化球だったけど、お前の球威なら真っすぐでいけるんじゃないか』とかアドバイスも頂いて」。技巧派右腕が、相手打線に植え付けた“残像”を活用し、パワー投手という自分の持ち味で抑える-。この日も前夜、久保にタイミングを崩されたヤクルト打線を、140キロ台後半の直球、ツーシーム中心で押し込み、封じ込めた。

 守護神時代、マウンドに上がるとファンからブーイングを浴びることもあった。今、同じ9回のマウンドでも、見える景色は全く違う。「自分自身が投げきって勝ちがつけば、チームが勝つ。抑えの時より気持ち的には楽ですね」と頼もしい。CS進出へ、「もう1試合も落とせない」という強い覚悟が、今の山口を支えている。【佐竹実】