<広島12-9ヤクルト>◇29日◇マツダスタジアム

 復活即貴重な1発だ!

 右太もも裏負傷でこの日1軍復帰したばかりの広島会沢翼捕手(26)が7回、ダメ押しとなる代打10号3ランを放ち、逆転勝ちを決めた。3位阪神とはゲーム差なしのままだが、連敗を3で止め2位確保に前進。本拠地初となるクライマックスシリーズ(CS)開催へ、負けられないチームに大きな戦力が戻ってきた。

 大歓声の中、会沢の打球が左翼席へ消えていった。思わぬ乱打戦は、相手ミスで2点を勝ち越した直後の7回、1死二、三塁、好機で代打を告げられた会沢が打った。ヤクルト久古のスライダーに泳ぎながら完璧に持っていった。ダメ押し10号3ランだ。

 「戻って1打席目で結果が出て良かった。必ずチャンスは来ると信じていた。真っすぐ1本で待っていて対応できた。2桁本塁打は目標だったので達成できて、良かったです」

 ほとばしる汗をぬぐいながら話した。「ぶっつけ本番」の緊張感から解き放たれた瞬間だ。

 3連敗を喫した前日28日夜、1軍昇格の知らせが届いた。8月31日に右太もも裏を負傷。「右大腿(だいたい)二頭筋損傷」で戦列を離れた。それから約1カ月。くしくも負傷後初のフリー打撃を行ったのが前日28日。捕球動作はブルペンのみ。ファームでの実戦出場なしでの復帰だった。

 5月10日に初出場した今季、大ブレークした。売りものの打撃では自身初の2桁本塁打にリーチをかけた。広島球団の歴史で1発のある捕手は少なく、2桁本塁打達成者は過去、門前真佐人(12本=53年)水沼四郎(11本=76年)石原慶幸(10本=09年)の3人だけ。それだけに2桁は念願だったが好調の8月末に故障、登録抹消された。

 「悔しかったですね。チームの力になれなかったですし…。それに2桁本塁打は目標でしたから」。達成直前で戦線離脱したがチームの正念場に戻り、いきなり結果を出した。

 「見切り発車だったけど最高の形で復帰してくれたね」。体調不良者が相次ぐ中で起用を決断した野村監督もうれしそうに話した。阪神も勝ち、明日10月1日の直接対決が持つ意味はあまりにも大きくなった。

 会沢は言う。「ここでやりたいですね」。CS地元初開催へ「球団史上最強捕手」を目指す男が戻ってきた。【高原寿夫】