ソフトバンク秋山幸二監督(52)が14日、今季限りでの辞任を電撃的に発表した。今日15日のクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ開幕前日に会見。1度は続投で合意も、指導者として10年目を1つの区切りに選んだ。6年間で3度のリーグ優勝。3年ぶり監督2度目の日本一で有終の美を飾る。また、後任候補として球団OBの工藤公康氏(51=日刊スポーツ評論家)に一本化、招へいに動くことが分かった。

 秋山監督の突然の辞任で降って湧いた監督人事。後藤球団社長は後任について「ノーコメントとさせていただく」としたが、ソフトバンク関係者の話を総合すると大物OBの工藤氏に就任要請することが分かった。

 工藤氏は延べ5球団で29年間プレー。西武黄金期を支え、95年に低迷期のダイエーに移籍。「勝つためにすべきこと」を体現し、周囲に影響を与えた。バッテリーを組んだ城島を、実戦を通じて一流捕手に育てたことでも知られ、ダイエー初優勝に貢献。理論的な投球フォームやトレーニングには定評があり、47歳までプロのマウンドで投げ続け、歴代13位の224勝を積み上げた。14度のリーグ優勝、11度の日本一を経験し、勝者のイズムが流れる。

 所属のなかった11年限りで引退。その後は解説者として活動の場を広げた。高校野球の番組ではキャスターをこなし、専門的なメカニズムを分かりやすく解説、卓越した野球観でも人気がある。ソフトバンクのキャンプにも頻繁に足を運び、秋山監督の依頼で同じ左腕の川原らを“コーチ”した過去もある。

 今春から筑波大大学院の人間総合科学研究科で体育学を専攻。けがの予防につながるトレーニング方法やコーチング理論などを研究し、飽くなき向上心を見せている。指導者として必要な熱もある。プロ球団での指導歴がなく、力量は未知数ながら、現役での豊富な経験、引き出しの多い野球理論は常勝を求める球団にうってつけの人材。かつてDeNAの監督候補に挙がったこともある。

 ソフトバンクは08年オフに王監督から秋山監督に政権移行した際、球団OBを監督に据える基本方針を確認している。“有事”に備えた後任リストに工藤氏の名前はあった。急転直下の後任問題。複数の候補を挙げながら、その中でも工藤氏を最有力候補に絞った。今後の交渉が注目される。

 ◆工藤公康(くどう・きみやす)1963年(昭38)5月5日、愛知県生まれ。名古屋電気(現愛工大名電)から81年ドラフト6位で西武入団。94年オフにダイエー、99年オフに巨人へFA移籍。07年、門倉のFA加入による人的補償で横浜移籍。10年自由契約で西武復帰。プロ野球最多の実働29年で224勝142敗3セーブ、防御率3・45。93、99年リーグMVP。最優秀防御率、最高勝率を各4度、最多奪三振2度。87年正力賞。日本シリーズ出場14度は王(巨人)に並ぶ最多。西武、ダイエー、巨人で日本一になった。10年に西武退団後、1年の浪人を経て引退。12年から日刊スポーツ評論家。左投げ左打ち。家族は夫人と2男3女。長男阿須加は俳優、長女遥加はプロゴルファー。