巨人阿部慎之助捕手(35)が来季から一塁手にコンバートされることが27日、分かった。この日までに原監督と話し合い、お互いの意見が一致して大きな決断を下した。巨人入団以来14年間、正捕手の座を張ってきたが、今季は首痛などもあり不本意な1年に終わった。来季は新しいポジションで打撃の輝きを取り戻し、打線の枢軸として日本一奪回を目指す。

 阿部は長年愛用した捕手ミットではなく、一塁ミットを携え、グラウンドへ向かった。来季へ向けて始動した秋季練習初日。この日までに重大な決心をしたことを表していた。選手として何が最善か、そしてチームにとって何がよりベストなのか。原監督と話し合い、双方の意見が一致して捕手から一塁手へのコンバートが決まった。原監督も「2人で話をしました。来年は一塁手ということになった。3割30本を目指してやってほしい」と新生阿部に期待をかけた。

 野球人生の大きな転換期を迎える決断をした。高2秋から捕手の道を歩み始めた。大学で強打の捕手として鳴らし、プロ入り後も1年目から巨人の正捕手の座を張った。攻守において、球団史上最高の捕手であることは誰の異論もない。

 一方で、今季は首痛などに悩まされた。肉体の痛みが捕手の守備にも影響を及ぼし、打率2割4分8厘、19本塁打、57打点と打撃不振にも波及した。定期的な休養を挟んでの出場に、葛藤も覚えていた。首脳陣の配慮には感謝した上で「144試合、すべての試合に出るのが野球選手としての目標。たまにしか来られないファンがいて、その1試合を休んだら申し訳ない」と話すこともあった。

 一塁コンバートで、新たな野球人生を歩み出す。今季も8月から兼任し、4番に固定されて打撃とともにチームの状態も比例して上昇した。また一塁の位置から俯瞰(ふかん)して、捕手の経験も交えながら、投手に有効的なアドバイスを送ってきた。ファースト阿部は、来季の日本一奪回を目指すチームに大きな力を加えることができる。

 太陽のような男は、明るく新たな挑戦と向き合っていた。軽めの全体練習が終わり、他の主力が家路へと向かう頃も、室内練習場にこもっていた。ティー打撃で約20分間、バットを黙々と振り込んでいた。「久々にバットを振ったら良くなっていないかな~。でも体がバキバキだ。来年はストイックにやるよ!」。捕手との別れは、阿部慎之助という野球人を新たな領域へと引き上げる。

 ◆阿部の一塁

 堀内監督時代の05年、右肩痛のため8月23日横浜戦から閉幕まで32試合を守ったのが最初。今季は24試合を守り、守備機会184で失策1(守備率9割9分5厘)。一塁でのスタメンは今季23試合あったが、成績は打率2割7分2厘(81打数22安打)。捕手でのスタメンや途中出場時の通算2割4分3厘(378打数92安打)と比べると、打率は良化した。