眠っている潜在能力を掘り起こす。中日谷繁元信兼任監督(43)が12日、今季最後の実戦となる今日13日の練習試合、ジェイプロジェクト戦(ナゴヤ球場)に1軍先発未経験の6年目小熊凌祐投手(24)を先発させることを決めた。今季は最後まで先発の駒不足に苦しんだだけに、フラットな目線で先発の“新戦力”を探す。

 谷繁兼任監督が今季ラストゲームの先発に、来季7年目を迎える小熊を指名した。登板した通算37試合はすべて中継ぎ登板。練習試合とはいえ、1軍で先発経験のない右腕を真っさらなマウンドに送る。その意図は明快だった。

 「いろんな可能性を試しながらやっていこうということ。長いイニングをやれば、いろんな持ち場をできる可能性が出てくる」

 小熊に先発としての適性があるのか、ないのか。投球は6イニング程度とみられ、結果を出せば来春キャンプから本格的に先発転向となる可能性も十分ある。

 先発の駒不足は悩みのタネだった。今季は開幕からシーズン最後まで先発ローテを守ったのは山井1人だけ。エース吉見らの故障に加え、若手の伸び悩みもあり、先発陣は火の車状態だった。先発不足が2年連続Bクラスの大きな要因となったことは確かだ。

 もちろん、補強も先発陣再建が大きなテーマ。ドラフトでは1年目からローテ争いが期待できる野村亮介投手(21=三菱日立パワーシステムズ横浜)、浜田智博投手(22=九産大)を指名した。森ヘッドコーチはドミニカ共和国で新外国人獲得に向けて調査中。トライアウトでは先発も可能な左腕八木を獲得。オリックスからFA宣言した金子にもアタックする。だが、万が一に備えた種まきは怠らない。小熊の先発テストは弱点克服に向けて手を緩めないという指揮官の意思表示だ。

 小熊も目をぎらつかせた。「どっちでもいけるようにしておけば自分のためにもいいですから。テンポよく、無駄な四球を出さない。回の先頭打者を切る」。兼任監督の頭にあるのは、補強だけではない。来季の開幕まで戦力フル稼働の策を練る。【桝井聡】