保留した1週間前と違い、スッキリした表情で会見場に現れた。ヤクルト雄平外野手(30)が16日、都内の球団事務所で2度目の契約更改交渉に臨み、4750万円増の年俸6000万円(金額は推定)でサインした。提示額は前回と同じだったが、約15分で交渉は終了。「野手として1年間やったことがなかったので(前回は)査定について細かいところを理解していなかった。納得してサインしました」と安堵(あんど)感を漂わせた。

 投手から野手転向5年目で約5倍、アップ率380%という大躍進にも、喜びは控えめだった。「僕よりうまい人はいっぱいいる」。打率3割1分6厘、23本塁打、90打点をマークし、ベストナインにも選出。それでも「走攻守でまだまだです」と満足感はない。

 目標を球界の「超人」レベルに設定しているのが理由にある。目指す外野手にオリックス糸井を挙げる。「投手から転向してあそこまですごい選手になっている。いつも追いかけてやっています」。筋力トレにより、身長174センチと小柄ながら、フルスイングができる肉体をつくりあげた。

 さらに最強外野手に近づくべく、守備範囲の広いセンターに挑戦する。今季先発は右翼91試合に対し、中堅は48試合。来季はバレンティンとミレッジと両外国人が両翼を固める見込みで、中堅手の守備負担は増える。それでも「ずっと中堅を目指して狙っていた。レベルアップしたい」と気合十分。新(あたらし)専務は「(雄平の)一番の理想は中堅定着。そこで今年の成績だと1億円も見えてくる」と期待した。

 夢がある。02年にドラフト1位入団時の契約金が1億円だった。「契約金と同じ年俸になることが、取ってくれた球団への恩返しになると思うんです。だから、1億円プレーヤーになりたい」。来季はセンターラインにどっしり腰を据え、また1つ、大きな夢をかなえる。【浜本卓也】