果てしなく広がる未来の輪郭は描かれていた。日本ハム大谷翔平投手(20)は何を思い、何を目指して今季、これから先へと向かうのか。昨季限りで現役を引退し、今年から日刊スポーツ評論家として活動する建山義紀氏(39)が、前途あふれる後輩の実像へ迫った。「3年目」「二刀流の魅力」「夢のメジャーとは」。ポイントになる3つのキーワードごとに互いが、真っすぐに本音をぶつけ合った。【取材・構成=高山通史、本間翼】◆二刀流の魅力

 唯一無二の投打「二刀流」は今季、3年目に突入する。当初渦巻いていた批判は、少なくなりつつある。

 建山氏

 僕は「二刀流」大賛成。打者として、相手投手のボールを肌で感じることは、マウンドの大谷君にいい影響を及ぼすと思うから。両方やっていることのメリット、デメリットは。

 大谷

 メリットは今おっしゃられたように打者での経験を配球面に生かせることだったり、攻撃側のサインを感じやすいという作戦面のことだったりですかね。それと、一番はやっぱり、2つやることが僕のモチベーションなので。1シーズン戦う上で、生きがいにしている部分があります。こうなったらもっといいのかなと考えたり、その結果成長を感じられる部分が2つあるということは、すごく楽しいです。

 建山氏

 打者として凡退したことが、投手にマイナスに働いたり、あるいはその逆はないのか。

 大谷

 打ち込まれると僕もモヤモヤしてるんですけど、普通の投手なら1週間空くところ、僕はすぐに挽回のチャンスがある。昨季はそう考えてやってました。打ち込まれた直後の試合の第1打席、けっこう打ってると思います。絶対打ってやろう、ここで取り返して次の登板につなげてやろうって考えています。

 昨季3失点以上した登板は全部で6試合。翌試合の第1打席の成績は5打数2安打で、8月12日のロッテ戦では左翼に本塁打を放っている。

 建山氏

 それはいいね。そういうメリットがあるわけだ。普段、どっちのことを考えていることが多いんだろう。たとえば(楽天の)松井稼頭央は、街を歩いててショーウインドーがあったら必ず打撃フォームをチェックしてる。

 大谷

 どっちだろう…打撃ですかね。(構えるまねをして)アクションが小さいので。(今度は投球動作をしながら)こうやってやるより、(打撃の動作で)こうやってる方が恥ずかしさが少ないというか…、お店でやるのはちょっと(笑い)。

 建山氏

 確かに目立つもんね(笑い)。でも周囲の目がなかったらどっち。

 大谷

 今は投げる方ですね。そっちの方が改善しなきゃいけない点が多い。反対に、打撃で調子を落としていて自分が不安に思っているときは、早く直したいので打撃を気にするかもしれません。

 建山氏

 他の選手はみんなどちらかひとつ。先発投手なら早上がりもある。うらやましく思わないのか。

 大谷

 早く帰ってもすることないですし(笑い)。自分がやりたくてやっているので。(ベンチを外れて帰るより)試合に出て打つ方が楽しいじゃないですか。(昨季の)CSも本当におもしろかった。最後負けてしまったので、今季、さらに頑張りたいなって思いました。